

埼京線十条駅に近い「十条銀座商店街」は、メディアでも頻繁に取り上げられ、その規模と賑わいぶりは都内屈指といわれています。 商店街の賑やかな通りを抜けると、戸建ての住宅が建ち並び、 空き地では子供達が遊ぶ、ちょっと懐かしい風景が見られます。その一角にある「Jコートハウス」を訪ねました。
9名の地権者が共同建て替えに合意したことから、平成17年に計画がスタートしたコーポラティブハウスです。(株)象地域設計の設計監理、NPO法人都市住宅とまちづくり研究会のコーディネイト、丸二の建設で平成19年8月に竣工しました。
Jコートハウスは、ガラスブロックとコンクリート打ち放しにタイルを施した瀟洒な外観です。名前の通り、広い中庭を囲むように住居スペースがあり、どの住居も日当たりがよく、風通りのよい設計となっています。その1つ、村川邸でお話をお伺いしました。
「冷やかし半分」で説明会に参加

-そもそもコーポラティブハウス建設に参加されたきっかけは何だったのですか?
偶然、「参加者募集」の折り込み広告を目にし、まったくの興味本位で説明会に参加しました。30戸近い組合員がどのように合意形成していくのか、コーポラティブハウスの作り方に興味があったのです。実は、当初は、冷やかし半分というのか、建設に参加するつもりはありませんでした。それまで十条の駅に降りたこともなければ、東急東横線沿線の職場へも遠いと思っていましたから。
-当時は家を探していなかった?
住んでいた所が手狭になっていたので、賃貸や分譲マンションを見たりはしていました。それでも、どれも決め手に欠け、「これ」というものはありませんでした。価格が折り合わなかったり、駅から遠かったり、夜道を帰るのに不安があったり、逆ににぎやかすぎたり。特に50m2台の広さで探そうとすると、物件自体が少なく、あってもいわゆる「コンパクトマンション」は構造に不安があったり、ファミリー向けマンションではこの広さの住戸は一番ロケーションの悪い位置だったりと、手詰まり状態だったのは確かです。

-説明会に参加していかがでしたか?
それが、いただいた図面でこの部屋を見た瞬間に気に入ってしまったのです(笑)。それまで見てきた物件の問題を全部クリアできると思いました。それだけでなく、三面採光が可能で、勾配天井は最大3.4m取れ、屋根を利用した足下収納が可能で、こんなユニークな物件にはおそらく今後巡り会うことはないだろうと思いましたね。申し込み受付が1週間後だったのですが、その間、建設予定地周辺を歩き回ったり、夜道を歩いたりして、問題はないか、確認しました。通勤時間も今までと変わらなさそうでしたし。実はこの時初めて、十条は商店街が充実していて暮らしやすそうな街だと知りました。
-参加するにあたって不安はありませんでしたか?
仕事が忙しく、平日に活動に参加するのは難しい状況でした。不安がある旨コーディネーターに伝えたところ、「5、6回開催される組合総会に最低参加できれば」ということでした。実際には、活動は土日中心に行われたので、出席率は高かったと思います。
コーポラティブハウスの合意形成プロセス
-全体にどのように進めていったのですか?
建設組合が結成されたのが、平成18年の2月。施工業者を選定する際には、見積金額も重要な判断材料となります。募集時に提示された価格はあくまで標準プランのものなので、個別住戸の設計に基づいて、改めて見積を取る必要があります。それには、GW明けまでには個別住戸内の仕様を決めなければなりません。そして、6月に施工業者選定のコンペを実施して7月に決定。8月には工事に着工しました。そこから建設に1年かかっています。
その間に、節目で組合総会が開催され、委員会で管理規約や共用部の仕様などを決定していきます。個別具体的な討議は、総会ではなく委員会で行われるのです。委員会は、管理、共用、植栽、イベントの4つがあり、居住者全員がどこかに参加することになっていました。
-件の「合意形成プロセス」はいかがでしたか?
我々のような一般参加者を募集できる段階では、さまざまな利害関係は調整済みで、そこにいたるまでが大変だったのだと伺っています。
委員会では、基本的には、コーディネーターが示したオプションから選択するというスタイルでした。ただ、時にはそれに飽きたらず、議論が白熱したこともありました。組合員の中には、住宅関連業界の方や、植栽を生業とされている方もいらっしゃって、よりよいコーポラティブハウスにするうえで、ずいぶん助けられたと思います。コーディネーターが意図した結果ではないと思いますが、Jコートハウスは居住者の世帯構成、年齢構成、職業などバランスがとてもいいように思えます。
個別住居内設計の確定

個別住居内の設計はどのように進めていったのですか?
1戸あたり2名の設計士さんが担当してくださり、年明けから4月末にかけて月に1~2度のペースで打ち合わせをしました。
-村川邸は1LDKとコンパクトながら、ユニークな作りですね。寝室の壁は腰高壁で、上部は開口可能で開け放すと広い空間となります。
これは設計士さんのアイデアです。当初はワンルームにしようと思ったのですが、エアコンの効率や遮光性の点から提案されました。クローゼットの扉を鏡にしたおかげで、実際以上に広く感じます。

-「一目で気に入られた」という構造も生かされていますね。
リビングは、それほど広くはないのですが、3.1mから2.4mの勾配天井なので開放感があります。窓も多く、光と風がよく入って気持ちがいいですね。また、キッチン、バス、サニタリーと、全ての水回りに窓を設けたので、衛生的でもあります。それから、収納も充実させました。天井高を生かし、キッチンの上に書棚つきの6畳の小屋裏を設けたほか、足下収納として2間の押し入れの下段相当の収納が2カ所あります。本もCDもまだまだ増やせそうなのがありがたいです。
-設計を進めていくうえでご苦労はありましたか?
4ヵ月で個別住居内の設計を確定するのは結構大変でした。それまで、家造りに関心がなかったので、トレンドを全く知らない状態でした。なので、3月、4月は、週末ごとにいろいろなメーカーのショールームを巡りました。住設機器は日進月歩で、設計士といえどもあらゆるメーカーの設備に精通しているわけはありませんし、実際に見たり触ったりしないと使い勝手はわかりません。床材などもサンプルと実際に用いるのではイメージが全く異なるので、ショールームは参考になりました。それから、部屋の形状が特殊なので、照明も設計図をもとに「あかりプラン」を作ってもらいました。今から思えば、使わない見積をたくさん取りましたね。
丸二への評価

-施工業者はコンペで選ばれたそうですが、何が決め手だったのでしょうか?
6社の中から最終的に2社のプレゼンを実施して施工業者を決めました。コーポラティブハウスの実績も見積金額も丸二さんが優位で、加えて、質疑応答に社長自ら誠実に応えてくださる姿勢に共感が持てました。私たちとは初対面のはずなのに、プレゼンは終始和やかな雰囲気だったと記憶しています。
-施工業者としての評価はいかがでしょうか?
竣工までに建主検査が3回あるのですが、初回で現場所長さんが全員の名前と顔と部屋番号を覚えているのには驚きました。私だって部屋番号までは覚えていません。現場所長さんだけでなく、丸二の社員はみなさん礼儀正しくて感じがいいですね。戦略的に接客のプライオリティを高くしているのだと思いますが、どんな採用・教育システムを採っているのか、仕事柄興味があります。竣工後も所長さんには細々と気を遣っていただきました。本来業務ではない、壁付けTVの位置まで直してくださって。不具合への対応も早いですね。
それに、私はタイル等も細かく品番指定したのですが、仕入れルートやロット等も考慮しなくてはならないでしょうから、指定したものではなく代替品を使うこともあるのだろうと思いました。でも、全て希望をかなえていただきました。27戸全部のわがままに対応するのは大変だったのではないかと思います。
居住者同士のほどよい距離感

-コーポラティブハウスならでは居心地の良さなどはどうですか?
居住者全員と顔見知りというのは大きな安心材料ですね。朝は「いってらっしゃい」、帰宅すると「おかえりなさい」と声をかけていただける、ほどよい距離感が嬉しいです。
-防火管理者の資格も取られたそうですね。
防火責任者を管理会社任せにしない方針で、なぜか白羽の矢が立ってしまったので、資格を取得しました。実は今日避難訓練を実施したのですが、みなさんコミュニティ意識が高く、思いのほか多くの方に参加していただけました。消防署の方からも、「この人数なら応急措置の講習会も開ける」とおっしゃっていただけたので、来年へ向けて企画しなければいけませんね。


-コミュニティと個別住居内と両方の快適性を実現されているようですね。お忙しい中、今日はどうもありがとうございました。
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(取材/撮影/記事 株式会社シーエイチシー)






