MARUNIの社長ブログ

温暖化の影響で温かいお正月でしたが、その後は急激な寒気がやって来ました。地球をめぐる環境の変化については、一方では「温暖化ではなく寒冷化」という説もあり、複雑な要素や情報が絡み合いながらも、いずれにしても悪化の道を辿っていると感じます。米国がシェールガスによって世界最大の産油国に成りましたが、原油価格が下落して行けば採算は合わなく成り、そして何よりも、大地に眠る埋蔵資源を採掘し続けて行くことが地球環境の悪化にさらなる拍車を掛けて行くでしょう。米国が産油国になったことで中東への関与が薄らぐ中、ロシアの影響力が増しています。これに中国が加わり、3つの大国による新たな覇権争い始まっています。その三国の共通の問題は、やはり経済(お金)だと思います。

3つの大国とも経済の先行きに大きな不安があると思います。もちろん日本も同様です。けれども今までのような小手先の修正レベルではもう大きな方向転換は難しいでしょう。大国や独裁国は力(軍事力)で事態を変えようとする可能性があります。日本はその想定の上で、防衛強化を図っている最中とは思いますが、日本が自ら軍事力を行使することは有り得ず(そう信じます)、では日本は何をもって自らこの現状を打開していくのか。当然、景気回復による経済の再生に成ると思いますが(遂に「マイナス金利」という奇策までも飛び出しました)、そもそも日本の経済力の源は何かというと、やはり「ものづくり」であり、「おもてなし」であり、結局のところ、「人」にあると思います。

NHKの「100分de名著」という本の紹介番組をよく見ますが、先月の「代表的日本人(内村鑑三:著)」はとても興味深かったです。内村鑑三という明治を生きた日本人のことを全く知らず、最初は(所謂)伝記ものかなと思ったのですが、全然違いました。この本では、代表的な日本人として、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮の5人を挙げているのですが、その紹介の視点が非常に面白く感じたのです。著者である内村鑑三は、キリスト教徒の思想家で、そういう(ある種の)信仰心、もしくは霊性という面から、この有名な5人を語っていたのです。

キリスト教徒である一人の日本人が、別の宗教観を持つ日本人に対し、心からの敬意と尊敬の眼差しで、その「人物像」を書いています。内村鑑三もキリスト教徒とは云え、教会はいらない、教義もいらないという異端な考え方を持ち、そういう意味では、八百万の神や大自然を信仰する日本神道の考えに近かったのではないかと感じます。その内村鑑三が、この5人の素晴らしい日本人について書きました。何を書いたのかと言うと、偉人伝ではなく、「天」についてです。例えば、西郷隆盛は天の声を聞き、天の命に従い、維新を成し遂げたという話です。西郷隆盛は、ひとの家を訪ねても、中の方へ声を掛けず、入り口に立ったまま、誰かが偶然出て来るのを待っていたそうです。また、靴を無くし、裸足で歩いていた時に、不審者として扱われた際も、自分が怪しい者でないことを証明してくれる人が、ここを通るのを待っていたそうです。このような西郷隆盛は、自分の欲ではなく、天の命によって生き、死んだのでしょう。この本の最後は日蓮の話ですが、まさに日蓮もそのようにして己を捨てた人生そのものだったと思います。この本は(実は)原書は英語で書かれたもので、私たちが読んでいるのは、日本語訳されたものです。つまり内村鑑三は、世界の人々に、あるいは世界のキリスト教の人々に、日本人のことを、そして日本人の知る「天」の存在を伝えたかったのではないでしょうか。

日本人の心の中に、天の概念は、今でも確かに生き続けていると思います。ただ、明治維新以降の物質文明への加速が、その天の意識を隠そうとしていたのかも知れません(西郷隆盛の危惧はここに在ったのでしょう)。けれども、今こうして世の中が大きく荒廃してくると、あらためて私たちの心の中から、何かが蘇ってくる(思い出してくる)気がするのです。日本人の本来持つ霊性が再び目覚め始めれば、また新たな智慧や技術が生まれ、天の命ずる新たな経済が発生すると思うのです。内村鑑三は、キリスト教徒という信仰の人でありながら、しっかりと「お金は大事」と明言しています。つまり、経済(お金)と道徳(天)を分けなかったのです。そしてこの5人の日本人も、誠実に経済(や政治)活動を行うと同時に、天の声に従い、自らの霊性を磨いていたのでしょう。

これからの日本や社会に必要なのは、まさにこのような価値観だと思います。経済と道徳を分けない。道徳的に生きながら、経済を高めて行く。今までは経済優先で、道徳は後回しでした。地球環境がどうなろうと構わない。お金のためなら法を犯す、嘘を言う、相手を蹴落とす。この結果が今の世の中です。けれどもこれからは、「経済と道徳を分けない」時代が始まろうとしています。だから日本人の出番なのです。きっと、天の声に一番近いのが日本のような気がして仕方ありません。番組内でこの本の解説を行っていた批評家の若松英輔氏のお話はとても分かりやすく、大変心を打ちました。内村鑑三も若松英輔氏も、早くにして妻を亡くしたそうです。その悲しみの果てに、「天」が見えたに違いありません。

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