interview お客様インタビュー

好きな町で二人の想いが形になった家創り

コーポラティブハウス
長江邸(CURA)
  • 工法 RC造
  • RC造地下1階地上6階建てコーポラティブハウス
  • 東京都渋谷区 / 2005年12月竣工
  • 敷地面積 / 約977㎡
  • 延床面積 / 1627.47㎡
  • 専有面積 / 約40㎡
  • 共同住宅 / 18戸

今回ご紹介するのは、前回に引き続き渋谷区笹塚にある全18戸のコーポラティブハウス「CURA」です。サツキが咲きはじめた4月下旬の日曜日、長江邸をお訪ねしました。
御主人は俳優として、奥様はデザイナーとして普段は忙しい日常を過ごされている長江さんご夫妻です。「仕事柄、劇場のある下北沢・三軒茶屋・目黒などがテリトリーとなっていますが、住むには笹塚が良いと思っていました。交通のアクセスが良い割には、ゆったりと暮らせる品のある町です。」と笹塚の町が以前から好きだったとおっしゃる御主人。そして、「好まない場所に家を建てて、主人が帰るのが嫌になると困ります。一生の棲家ですから気に入った場所を選択することは大切です。」と笑いながらおっしゃる奥様です。
お気に入りの笹塚で、理想の暮らしを実現されたお二人にお話を伺いました。

初めは諦めていたコーポラティブへの参加

中野区にお住まいだったご夫妻は、賃貸での住み替えを考えていました。「利便が良い場所は賃貸料が高くて部屋が狭い、安くて広いとなると遠くて不便な場所になってしまいます。いろいろ探しましたが納得の行く物件は見つからず、部屋探しに疲れてしまいました。」と奥様です。そんな時、御主人が笹塚駅に貼ってあったコーポラティブ募集の広告を目にします。「地味なポスターでした。でもそこに表示されていた価格の安さにまず驚き、尚かつ自由設計ができるということで信じられない思いがしました。」と御主人です。「当時は家を購入することは考えていなかったので、冷やかし半分で説明会に出かけました。派手でショーアップ的なことが全く無く、学者の研究発表の様な説明に信頼感を覚えました。でも、家創りに関して何の計画もなかった私達には参加は無理だと思いました。」と当時を振り返るお二人です。
建設場所が笹塚であること、自由設計ができること、宣伝費をかけないために低価格が実現していることにお二人の気持ちは動きます。「説明会後もコーディネーターの方が親切に誘って下さいました。資金に関しても、諸費用から税金まで、購入後に余計な出費が発生しない様明確な提示が有り、親身になって相談に乗ってくれました。」と奥様です。「広告に掲載されている販売価格は安いと思っても、購入後の出費が嵩み、ローン返済が困難になるケースがあると聞きます。今回の様な親切なアドバイスはありがたいですね。諦めていた参加を考え直しました。」と御主人です。
平成16年春の説明会に参加してから2ヶ月間じっくりと考えて、参加を決めたのはその夏のことでした。

大人同士の付き合いができるコーポラティブ

「以前にもコーポラティブ募集の広告は目にしたことがありますが、都内の高額物件ばかりでした。」と御主人。「コーポラティブは、イギリスなどで地域住民が集まって集合住宅を建てるシステムだと考えていたので、私達には関係が無いという認識でした。」とは奥様です。
CURAの様に、土地から設計会社・建設会社まで決定していて、組合結成から総会に至るまでの労力を要する部分をコーディネート会社が担当する方法は、忙しい日常を送るお二人には最適でした。総会も10回程開かれましたが、「参加者の意見が分れても、コーディネーターの方が上手く仕切ってくれました。皆が納得する合理的な進行ながら、温かみを感じる話合いができました。」と奥様の感想です。総会への参加を通して入居者の方とも顔見知りになります。「賃貸マンションでは入居者の入れ替りも多く、どんな方が住んでいるのか分らない不安がありました。ここでの暮らしは、住む前から皆さんの顔を知っていることで非常に安心できます。」と奥様です。
「以前の家ではゴミ出しでトラブルが起きましたが、ここでは一切ありません。深夜の足音でも皆知合いですから不安もありません。逆にお疲れ様という気使いの気持ちが生まれます。」と御主人の言葉です。「気使いがあるけど口には出さない、大人同士のお付合いとでも言うのでしょうか・・・心地良く暮らせるコミュニケーションが実現し、とても住みやすいです。」とお二人は口を揃えます。

耐震性の高さを実感、安心の暮らしを生むCURA

ポルトガル語で"癒し"を意味する"CURA"ですが、「夜遅く疲れて帰宅した時でも、温かみのある灯りに照らされたCURAを見ると心が安らぎます。」と御主人がおっしゃる様に、その佇まいは住人の心を癒している様子です。「普通のマンションと違って、18戸全ての造りが異なる複雑な構造が面白く、それぞれの個性が出ているのに全体的に調和しているのはすばらしい。地下から6階まで吹き抜けで、共用スペースにも余裕を持たせた開放感ある建物全体のデザインも気に入っています。」とおっしゃるのは奥様です。
丁度鍵の引渡し時期に一連の耐震偽装問題が起こり、入居者の間でも心配する声が上がりましたが、耐震性の強さも驚く程実感されている様子です。「担当の設計士の方に直接確認しましたし、総会でも納得の行く説明がありました。設計段階でこちらの希望する場所に窓を設けられない等の制約がありましたが、今になるとそのシビアな対応は建物の強度を保つためだと理解できます。」と奥様の言葉です。人一倍地震に敏感な奥様ですが、ここに入居してからは揺れを感じたことが無いとおっしゃいます。「彼女は勤務先で地震を感じるとすぐに電話してくるのですが、家に居る僕は全く気づかない。しっかりと建てていますね。」と御主人です。
建物全体にも安心と愛着を感じている様子がお二人のお話から伺えます。

ライン しっかり建ててきちんとアフターケアする丸二

CURAは、設計/株式会社ケイ・吉嶋プロジェクトパーティ、コーディネート/株式会社西洋ハウジング・有限会社ライヴ不動産企画、そして建設会社/株式会社丸二で平成16年春から推進し、平成17年12月に竣工となったプロジェクトです。「丸二さんの名前は知りませんでしたし、価格が安いこともあり、最初は不安でした。」とおっしゃるお二人です。参加を決めた直後に丸二のホームページを見てコーポラティブや公共の物件も多く手掛けていることを確認します。そして、千代田区が推進し、丸二が建設したコーポラティブを見学、「エントランス内を見たり、外壁にヒビ割れが無いかチェックしたりしました。素人目ですが、しっかり建てているなと感じました。そして、公共の物件を多く手掛けていることが安心感に繋がりました。」と、丸二の建築物件を実際に訪れて安心したご様子です。
平成16年の夏から基礎工事が開始します。「基礎工事の時期も遠くから眺めていました。本当にこの価格でこの場所に建つのかと工事が始まるまで不安でしたから・・・」と笑いながらおっしゃる御主人。躯体ができあがった時期に行われた見学会にも参加、「各戸のスペースが仕切ってある状態での見学会でした。グループに分かれて18戸のスペースを見て回るのは探検のようで楽しかったです。断熱材がしっかり入っていることも確認できました。」と当時を振り返るお二人です。
その後も工事経過について細かい連絡が入ります。「工事途中での大きな問題はありませんでした。でもデザイナーという仕事柄でしょうか、建具の取り付けなどが水平や直角にキチンと収まっていないと気に掛かり、結構厳しいことも言いました。コーポラティブは一戸一戸全て仕様が異なるので造る側は大変だと思いますが、丸二さんは細かく対応してくれました。」と奥様です。そして、「住んでみると、ついついあら探しをしてしまいますが、アフターメンテナンスもしっかりお願いしているので安心です。」と笑いながらおっしゃる御主人です。
丸二とのお付合いは、まだまだこれからも続きます。

デザイナーならではのアイデアから生まれた個性豊かな家

「以前住んでいた部屋のコンクリート壁やガラスブロック、床のテラコッタやコルク材の意匠が気に入っていて、そっくりそのまま持って来たかった。そして、限られた面積の中でも、背の高い主人がゆったり暮らせる居住空間にしたかった。」とおっしゃる奥様。長江邸はこの奥様の希望を基本に創られました。商品デザイナーである奥様は自分で図面を描き、素材も指定して設計士に相談します。「家創りに関しては素人ですから、希望の形が構造上実現しないこともあり、理想と現実の折り合いを付けることに苦労しました。随分とわがままを言いましたが、設計士の方は丁寧に対応して下さいました。住んでみるとプロのアドバイスの的確さを実感します。」と設計期間を振り返ります。
平成17年12月中旬に、ここでのお二人の新しい暮らしが始まりました。約40平米のスペースを広く高く無駄なく使った、奥様のアイデアが一杯詰まった長江邸をご紹介します。
玄関を開けると、美しいモザイクタイルをコンクリートに貼ったアートな壁が目に飛び込んできます。床に敷かれたテラコッタタイルとの調和が美しく、訪れた人の心を潤す芸術的な空間になっています。玄関から居住スペースへはコルク材を敷いたフラットな床で繋がっています。玄関と居住スペース、ダイニングとサニタリー、リビングとクローゼットをそれぞれコンクリート打放しの壁で仕切り、圧迫感を無くした洗練の空間を創り出しています。

室内には、空間利用のための様々な工夫が施されています。リビングとクローゼットの間にある壁の下側は大きく開いていて、移動式ベッドが設置されています。「ベッドはスペースを取ります。どうしたら邪魔にならずに設置できるか考えた苦肉の策です。」とおっしゃる奥様のアイデアには驚きます。昼間はベッドの半分をリビング側に出しソファとして利用し、夜は全部引出すと大きなベッドとなり、身長191cmの御主人もゆっくり眠れる仕掛けです。そして、リビング反対側のスペースはクローゼットとして活用しています。「私は想い出のある物が捨てられないので、物や服の数がとても多いし、主人の服も大きいので、数量やサイズに合わせてパイプを設けました。」と奥様です。

ダイニングとリビングは強化ガラスで仕切り、クローゼットスペースも普段は開け放して、居住スペースは一体感を持たせ広さを演出しています。ドアは背の高い御主人に合わせて高さのある特注の物を使用、天井はダクトを剥き出しにして高さを強調しています。「今までのマンションは手を伸ばすと天井についてしまいました。たまにドアに頭をぶつけることもありましたが、ここではそんな心配もありません。自由設計の良さですね。」とおっしゃる御主人。トイレやバスルームにも窓を設け、換気と採光の良い寛ぎの空間にしています。また、北西に位置する場所ながら、ガラスブロックやスリットガラスから光を採り込み明るさも確保しています。
お二人が驚いたのがこの冬に結露が全く起こらなかったことです。「設計士のアドバイスで、建物外壁の裏側に当たる室内壁は、吸湿性の高い素材を使用した塗壁にしました。その効果と、断熱性の高い躯体の造りのお陰もあって、この冬の結露は全くありませんでした。」と健やかな住環境を実感されているお二人です。

「自分達の考えたことが形になったのが嬉しいですね。気に入った意匠が実現し、尚かつ床暖房や食洗機などの近代的な機能で暮らし易さが増しました。」と奥様の感想です。「狭いスペースを上手く生かした彼女のアイデアには本当に感心しました。自分達の生き方に合った居心地の良い家です。」と大満足の御主人です。 個性溢れる家創りとなった長江邸。ビューポイントを伺うと、「壁のモザイクタイルと手創りのダイニングの照明です。」と答えて下さった御主人の言葉を受けて、「すごくごちゃごちゃしている印象があるので、要所にきれいな物を置いてコントラストをつけました。」と奥様。

奥様が幾何形モチーフを使ってデザインされた玄関のモザイクタイルは、色調が美しくいつまでも眺めていたくなります。灯りのデザイナーである友人がプレゼントしてくれた照明は、温もりのある光とクリスタルの繊細さに思わず引き込まれてしまいます。
そして、壁に飾られた奥様が撮った御主人の写真・・・印象的な長江邸の小さなギャラリースペースは、訪れた人も心癒される空間となっています。