interview お客様インタビュー

感性の家づくり ハノイとパリの記憶から

賃貸併用住宅
N様邸
  • 工法 RC造
  • 鉄筋コンクリート造(RC造)4階
  • 東京都中野区
  • 敷地面積:187.24㎡
  • 延床面積:345.47㎡

ベトナムで生まれ日本へ

中野区の駅前からほど近い住宅街。賑やかな通りをすこし入ったところに、周りとはすこし違った佇まいの集合住宅がすっと建っています。明るいベージュの壁、たくさんのお花に囲まれたこの家は、どんな想いでできたのでしょうか。

バナナの葉っぱに包まれて

「この家にはベトナムとパリの記憶が詰まっています。わたしが生まれたのはベトナムです。ベトナム戦争の時代、ジャングルの中で生まれて、バナナの葉っぱに包まれていたそうです。父は派遣医として戦地に居て、母はベトナム人でした。父は戦争が終わってからもベトナムに残って、士官学校で校長をやっていました。日本には5歳の時に戻ってきたんです。」

ハノイの記憶

フランス領だったベトナムのハノイには、アジアの喧騒とヨーロッパのエレガンスが同居した町並みがありました。「ハノイの記憶はありましたね。この家の雰囲気にも、たとえば壁の色や窓に出ている花壇などに、その記憶が反映されていると思います。」

パリの想い出と蓄積された感性

蓄積される感性

Nさんは、この家の1階でお花の教室をなさっています。その横では、ヨーロッパの雰囲気が漂うお花屋さんも。 「日本に帰ってからは、お茶やお花、盆石のお稽古に通いました。『日本では日本の文化の道を極める』という方針の父母はとても厳しかったですが、感性というのは蓄積されていくもので、それが今の仕事になっていますね」

パリの中庭にて

「お花を続けているうちに、フラワーアレンジメントの勉強のためにフランスに渡り、4ヶ月ほど滞在する機会があったんです。その時に住んでいたアパルトメントには、中庭があって、噴水もありました。合理性だけ考えるとムダなスペースかもしれませんが、そのムダこそが暮らしに豊かさをもたらすと思うのです。」

“もったいない使い方” と言われても

「土地的にはこの使い方はもったいないよ、とも言われました。でも作ってよかった。階段をつけて、すこし庭のようになっていて、地域のマルシェを開催できたり、人が集える場所になって、これもパリで過ごした時の感覚があるのかもしれませんね。」

儲けにはならなくても

「地域のマルシェとして、身近にいるパン屋さん、アクセサリーを作っている人、野菜を売る人に声をかけて集まってもらいました。子どもたちには風船をあげたり、とっても好評でしたよ。儲けにはもちろんなりませんが、人がくるきっかけになり、花屋があるということも知ってもらえました。」

町に溶け込む個性

町並みにしっくりと

特徴的な外観だからでしょうか。道を通る人たちはしばしば、立ち止まってこの家を見ていくそうです。角ばっていない、丸みのある暖かい色の壁面。そしてもうひとつ、大きな特徴は2・3階の窓の外側に出ている花壇。この存在感が、日本の一般的な集合住宅とはまったく違う雰囲気を作っています。便利さを考えるなら花壇ではなくベランダをつくりそうなものですが、Nさんはそうはしませんでした。

ハノイのような、 パリのような

「ベランダではなく花壇を、というのは最初の段階から丸二さんにお伝えしていました。いまは花を植えられていないのですが、近いうちに咲かせたいと思っています。」

お花の仕事と家づくり

東京は紺が似合う

「東京は紺が似合う街」といった感覚的で、はっとさせられる発言が飛び出してくるNさんのお仕事は、お花の先生。感性のお仕事です。お話を伺っていても、ご自身の感覚や想いを大事にされていることが伺えます。 「お花も家づくりも、感性が大切だと思いますね。自分の感性や想いから出てくるものを、家に一つでも二つでも実現すると、家に愛情がわく。大切に思えるんです。」

形ではなくて生き方

「いけばな」というのは、お花をいかに上手くいけるかという単なる技術ではありません。毎日どういう風に暮らしているのか、ものごとにどういう興味をもって接しているか、その生き方全部が一つの作品として表現されます。

感動の源=感性を育む「道」

お花の道も、一人前になるには最低18年かかります。道は一夜にしてはなりませんが、「日本の心」を大切にするというのは素晴らしいことです。

作品を展示するように並べられるお花

物件の活用も相談しながら

活用のこと、お金のこと

住居兼集合住宅という活用方法についてはどういう経緯で決めていったのでしょうか?
「2階は貸し出して、1階は店舗利用に落ち着くまで、丸二さんにずいぶん相談しながら決めました。お金のことも含めて、相当研究してくださったのかなと。この土地ならこういうお客さん、間取りは大きめのほうがいい、といったことを提案してもらって。」

はじめての入居者はフランス人

「貸し出した2階で、最初に入った人がフランス人のご夫婦だったんですよ。ご覧になって即入居を決めてらっしゃしました。」

オーナー様のイメージと 社会のニーズ

丸二の担当者はこう振り返ります。「土地柄や駅から近いことを考慮して、カップルや小さい家族がお客様になりますね、というご提案はさせていただきました。最初に入ったのがフランス人ご夫婦だったのはすこしびっくりしましたし、嬉しかったですね。オーナーさんのこだわりのイメージをかたちにして、賃貸のニーズにマッチさせる、ということを考えつづけました」

家は光

光がいっぱいの部屋

明るい東屋のようなサンルームです。木のフレームの大きな窓が落ち着きを演出します。

床にもパリの記憶が

「パリのアパートの床がこの模様だったんです」
ここにも大切な記憶が積み重なっています。

細部へのこだわり

こだわりの室内

室内もたくさんのこだわりが詰まっています。フロアから一段あがった和室には、畳の下に収納があって、電動で開閉します。 「お客さまがいらしたときのゲストルームとしても使うことを考えました。畳は落ち着きますね。あと、お仏壇はやっぱり畳の部屋に置きたいなと思って。」

トイレの収まり

トイレは引き戸に。収まりを工夫して、場所を有効活用しています。

選び抜かれた細部

室内もNさんの感性が細部まで行き届いた空間に。壁紙、カーテンなどもNさんの審美眼で一つ一つ選びぬかれたもの。

ガラス食器類のコレクション

丸二との出会い

実直な人柄

丸二に設計と施工を依頼することにしたそもそもの経緯はどういったものだったのでしょうか。
「丸二の渡辺社長とある会合でお会いしたんです。実直な方だなという第一印象でした。それから1年くらいして、お願いするとかということではなく、将来はこういう家をつくりたいんだ、といった話しをお会いした時にしていました。」

家を守ること

そして家の相続ということを考えたあるとき。「この土地を売って、どこかのマンションに移ろうか、と息子に相談したんです。すると、“家の名前を守らなくてはいけないんじゃないか”と言われて。じゃあ家を建てるなら渡辺さんだ、と思って、丸二さんに連絡しました。」

会社にお花があったので。人間がよければ、全てが良い。

「最初は丸二さんの会社に伺いました。そうしたら花が飾ってあった。造花ではなく、生花。この生きた花を、従業員の方みずからがお世話していると聞いて、この会社の考え方がはっきりとわかりました。こういうことを大切にしているんだなと。」
「人柄がわかれば、その人がどういう仕事をするのかわかります。丸二さんが今までどういうものを建てたのか、今でも見たことありませんが、渡辺社長も、担当だった加藤さんもお人柄がよかった。それが全てです。この人たちなら私の想いをくみ取ってくれるだろうと、そう思えたんですね。それでも正直、その想いはどこまで伝わるのかなと思っていましたが、最初に頂いた提案でだいたい完成形ができていましたね。」

実績の蓄積と提案力

多様なニーズに対応できる 実績の蓄積と提案力

「N様は作りたい家のイメージを最初から明確に持っていらっしゃいました。ご自宅、賃貸、店舗を併用したいというご要望がありましたので、一戸建て、マンション、テナントビル等、様々な工事実績のある弊社にとって、腕の見せ所だと思いました。」

要望をどうやって汲み取って どういうチームをつくるのか

「どんな家を作るかのお話を伺っていて、強いこだわりとデザイン性の高いイメージがあることが理解できました。ですので、今回はそのスタイルにあった設計士と直接、意思疎通できたほうがよいなと考えて制作プランを組み立てました。それが功を奏し、最初のご提案からイメージ通りと気に入っていただけました。」

引き渡した後も お付き合いは続く

「お引渡しの後も、定期点検などで伺いますし、あとは何かのお祝いなどのときにお花を買いに行きたいですね。お花の展覧会のご案内も頂くので、その機会にもお会いしたり。作った後の関係性もやはり大事にしたいです。」