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クライマーズ・ハイ

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映画「クライマーズ・ハイ」が公開されていますが、私は数年前に、横山秀夫氏の原作本を読みました。1985年8月12日に、群馬県御巣鷹山で起きた日航機墜落事故を取材する地方新聞社の記者たちの、怒涛の数日間と、全権デスクを任された主人公の過去の失敗、家族、親友、山登りに対する心のあり様を絡ませた物語で、なかなか読み応えのある作品でした。私自身も、この日の夜のニュースが大変な騒ぎになっていたことを覚えています。その後、生存者が救出されたこと、機内で書かれた遺書が発見されたこと、事故原因が以前起こしたシリモチ事故だった(らしい)こと等が明らかになり、航空会社の重大な責任問題へと続いていきました。
今あらためて感じるのは、生命を預かる仕事の責任の重さです。航空や鉄道をはじめとする運輸関係、医療、薬品、食品、警察、消防、そして建築。直接的に人の生命に関わる仕事というものは、ほんの少しの落ち度で、重大な結果を生み出してしまいます。時には、ビジネスとか商売を度外視した大きな使命感を持たないと、本来は成り立たない仕事のはずです。しかしながら、時代は収益性だけに価値観を置くようになり、そこに大いなるジレンマや矛盾を抱えたまま、人々の生命を守ることへの意識が全体として希薄になってきたように感じます。国の政治も、そういう意味では、国民の生命・生活を守ることが本業ではないでしょうか。今こそ、国も民間も、本当に大切なものを見つけていくべきだと思いますし、それを評価し支える文化、仕組み、価値観の創造を同時に行っていかないと、生命を守る大切な仕事の安定は図れないと思います。
尚、「クライマーズ・ハイ」ですが、本を読んだ印象だけですが、新聞社の内部の「戦い」の凄まじさを強烈に感じることが出来ました。新聞を制作する側と販売する側の戦い、個人的な嫉妬や抗争、他紙に負けない取材合戦、上司と部下との軋轢・・・。ひとつの目標に向かって、個人個人が己の能力と体力の全てをかけて、戦っていく姿。こういう人たちがいて、実際の世の中は動き、支えられているのだと思います。最近(残念ながら)増えてきている「指示待ち人間」では、恐らく一日たりとも、居ることができない職場でしょう。でも、それこそが真の職場であり、真の仕事であろうと思います。映画も見てみようと思います。