2018.12.27
天皇誕生日と今年を振り返って
平成最後の年の瀬が近づき、静粛な日々が流れゆく中、12月23日の天皇誕生日にて、TVで天皇陛下の会見を拝聴し、心の震える思いをいたしました。平成天皇の生涯の祈りとは、「国民の幸せ」と「戦争の無い時代」だったと思います。その願いの通り、平成は戦争の無かった平和な時代として、幕を閉じようとしています。この平成時代を共に生き抜くことのできた日本人の一人として、まさに感無量であり、心から感謝の思いでいっぱいです。
平成は自然災害の時代でもありましたが、日本人の和の精神が復興し、今後の地球規模の災害時代に向けて「腹が座った」という面もあると思います。常に最悪を想定し、準備しておくことの重要性も共認できました。新元号元年と成る2019年以降は、世界は更に大きな変化を起こし、災害も増加すると思われます。新元号の時代は一体どのような時代に成るのでしょうか。新たな元号名と共に、固唾を飲んで見守る日々が、あとしばらく続くのでしょう。
もちろん日本は、新天皇の時代に入っても、平成天皇の思いを受け継ぎ、更なる平和と繁栄を祈る道を行くことに成ると思います。そして私たち国民も、同じ思いで歩んで行きたいと思います。TVで会見されていた今上陛下は、時より涙を堪えながらお言葉を述べられていましたが、国家の象徴的存在から、「国民に衷心より感謝する」というお言葉を戴ける(世界で稀なる)国に生まれたことに、繰り返し、感謝の念を持ちます。この日本の国魂が、世界を明るく照らす時代に成ることを心から祈ります。
さて私たち丸二ですが、おかげさまで今年も良い年越しを迎えられました。これも全て、お客様、関係者の皆様、地域の方々のおかげと、心から感謝いたします。来年からは「御用達」の精神を更に強化し、社会に無くてはならない存在に向上進化して行きたいと思います。お客様に喜ばれる提案力、技術力、現場力を磨き、社員一人ひとりの人間性を向上させ、お客様と共にニコニコ笑顔の花火を打ち上げて参ります。
建設業とはまさに思いの産業だと思います。目に見えない思いを、物理的な形にするリアリティーのある仕事です。人間の手が無ければ何ひとつ創造できない芸術作品でもあります。人々が生きるリアリティーを失いつつある現代社会において、いずれこの道を選択する若者がきっと増えてくると思います。新元号の時代へ向けて、建設業への大いなる夢と志を持ち、丸二は来年もひた走って参りますので、何卒よろしくお願いいたします。
そして私個人も、最近から(超初級レベルの)筋トレを始め、心と体の両面を鍛え始めています。来年には五十の半ばを迎えますので、新元号時代に備え、心身共に整備中です。また昨年来から始めた山城歩きも続けて行こうと思います(山城歩きは、頭を使い、体を使い、想像力を働かせる知的運動です)。けれども私の個人的楽しみの中心は、常にインドアで、映画・音楽・読書が最大の喜びです。振り返れば、今年もいくつかの私的感動がありました。
例えば・・・。
①エレファントカシマシの30周年記念コンサート「30th ANNIVERSARY TOUR “THE FIGHTING MAN” FINAL@さいたまスーパーアリーナ」へ妻と行ったこと=いつもながら素晴らしいコンサートでしたが、桜吹雪の舞う中で歌う「桜の花舞い上がる道を」を初めて観て、鳥肌が立ちました。挫折と苦労を乗り越え、胸を張って生きて行こう。彼らの音楽には不思議な力があるのです。
②はじめて宇多田ヒカルの音楽を(ちゃんと)聞いたこと=最近の2枚のCDを聞いて、その深遠なる音楽性に驚き、感動しました。母親の藤圭子が亡くなって以降、彼女の音楽には変化があったそうです。NHKの特集番組でのインタヴューでは、「真実が何かを知りたい」と繰り返していましたが、その一念が、音楽を別の次元に昇華させているのかも知れません。現代の求道者と感じました。
③友人の誘いで、東京アカデミックカペレの演奏会へ妻と行き、近代フランスの作曲家アルテュール・オネゲルの「クリスマス・カンタータ」を初めて聞いたこと=まるでお経のような合唱で始まり、途中で美しい児童合唱が加わり、最後は「きよしこの夜」が歌われるという、摩訶不思議なカンタータに魅了され、早速CDも買ってしまいました。クラシック音楽にはまだまだ素晴らしい曲があるのですね。
④今年も映画のDVDを数多く観ましたが、特にフランスの映画監督ロベール・ブレッソンの作品に興味を覚えました=「少女ムシェット」「バルタザールどこへ行く」「ラルジャン」等を観ましたが、基本的には全て悲劇、悲しい話ばかりです。けれどもモノクロ画面の美しい映像の中で、静かに動く(基本的に全て素人の)役者たちの姿に、自らの人生が投影されて行きます。そして悲しい結末を迎えながらも、人の幸せと自分の幸せを祈る思いが生まれます。とても不思議な感覚でした。
⑤小津安二郎監督のDVDもよく観ました=有名な「晩春」「麦秋」「東京物語」は以前から好きでしたが、今年は「お茶漬の味」「早春」「東京暮色」「彼岸花」「お早よう」「浮草」「秋日和」「秋刀魚の味」等を観て、あらためて小津映画の美しさ、芸術性を感じることが出来ました。物語はよくあるホームドラマなのに、小津作品の全てのカットの中には、普遍的な人間の美意識が宿っていると感じます。世界の映画評論家が「東京物語」を世界映画のベスト1に評価する意味もよく分かります。日本人の美意識が「この目で」観られるからです。溝口健二の映画も同様だと思います。私は日本人の映画監督では、小津安二郎、溝口健二、成瀬巳喜男の三人が好きです(黒澤映画はちょっと苦手です・・・)。
⑥今年から海外文学を読み始め、「ラテンアメリカ文学」の存在を知ったこと=コロンビアの作家ガルシア・マルケスの「予告された殺人の記録」、アルゼンチンの作家フリオ・コルタサルの「悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集」を読み、久しぶりに本を読む喜びが湧き上がってきました。二人ともラテンアメリカ文学の代表的な作家で、特にガルシア・マルケスの「百年の孤独」は最高傑作とのことです(来年、挑戦してみたいと思います)。ラテンアメリカ文学の特徴は「魔術的リアリズム」にあると言われています。確かに幻想的な物語なのですが、それが決してファンタジーではなく、現実的なリアリティーの中に存在しています。夢の中で起きていることは、夢を見ている自分にとって、まさに現実であるのと同じように。人間の潜在意識と共鳴する新しい芸術文学です。
⑦横山大観の美術展へ行き、「朦朧体」を知ったこと=横山大観の富士山の絵が大好きで、妻と美術展に行ったのですが、実物はやはり素晴らしかったです。横山大観の絵は朦朧体と呼ばれるのですが、これは横山大観や菱田春草等によって試みられた没線描法とのことで、輪郭を持たない新しい表現であった為、悪意をもって「朦朧体」と呼ばれたそうです。けれども私は好きです。菱田春草という絵師の作品も(インターネットで見ただけですが)とても素晴らしいです。周囲から何を言われても、本物はいずれ必ず評価されるのです。
⑨いわさきちひろが宮沢賢治をリスペクトしていたことを知ったこと=前進座の「いわさきちひろ」の公演を妻と観に行き、ちひろが宮沢賢治のファンだったことを知りました。私も宮沢賢治が大好きで、その作品や生き方に共鳴しています。確か宇多田ヒカルも宮沢賢治のファンだったと思います。賢治の言葉は、易しく捉えられたり、誤解されたりもしますが、実際は極めて厳しい内容です。厳しく苦しい道を歩みながら「ほんとうのさいわい」とは何かを(オロオロしながら、涙を流しながら)探し行く行為の中に(既に)「さいわい」は在るのだ・・・。ちひろも、そのような道を歩んだのでしょう。前進座の舞台、とても素晴らしかったです。
この様ないくつかの私的感動のあった2018年に心から感謝し、そして来年もまた、自らと世の中の「さいわい」を探す道を歩んで行きたいと思います。今年も一年、本当にありがとうございました。来年も何卒よろしくお願い申し上げます。