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密度の時代

夏の猛暑を超え、やっと過ごしやすい秋の風が吹くと、もうすぐ冬がやって来ます。本当に一年が経つのは早いものです。今年の秋の始まりは北海道の大地震や大型台風等、自然災害と共にやって来ました。最近のニュースでは、様々な災害が発生すると「頑丈な建物の中に避難してください」というアナウンスがよく聞かれます。台風、強風、竜巻、水害、地震等のあらゆる災害から身を守るためには、安心安全な建物が絶対条件に成って来たのです。
今後もし、地球規模で様々な種類の自然災害が多発するとしたら、人々の生命を守る「頑丈な建物」の存在の有無が、国家の命運をも左右する時代に入ったと(決して大げさではなく)言えます。地震の少ない国で震度6や7の地震が発生した場合、その国は一瞬にして全機能が停止してしまう可能性もあるからです。日本のみならず、世界の建築技術の役割と責任が、益々重く成って来たと感じます。
その一方、建築業を目指す若者が減少しているという現状もあります。かつて3Kと言われた厳しい業界よりも、新しい成長ビジネスの方が、確かに魅力的に映ります。けれどもその流れと同時並行し、最近になってやっとモノづくりや職人技能への回帰の潮流も(極めて静かにですが)動き始めた感があります。若者たちが「リアリティ」を失いつつある(虚ろな)時代の中で、個々の魂が「生きている(確かな)手応え、実感」を欲し始めたのではないかと。人間の生活の根源的エネルギーの渦が、新しい時代への扉を開こうと、悪戦苦闘しているのが「今」ではないかと感じます。
2020年の東京オリンピック以後の日本の景気については様々な観測が出ていますが、このままインバウンド(訪日外国人旅行者数)の拡大が継続できれば、観光立国としての新たな国家ビジョンが成立して行くのではないかと大いに期待しているところです。この恩恵は首都東京だけでなく、日本全国の隅々までが観光資源として付加価値化する可能性が大いにあると思います。巨額な投資をせず、ありのままの自然の姿とおもてなしを外国人の方々にご提供することで、日本経済の安定が得られると思います。
けれども日本人の人口が減少傾向にあるのは事実で、既存の経済全体の収縮は避けられないと思います。拡大から収縮の時代においては、「密度」を上げて行く道を行くべきです。今の技術を磨く、サービスを磨く。もっともっと研磨して、研ぎ澄まして行く。小さいが故の透明感、輝きをさらに増して行く。此処への一点集中です。建設業は当面は人手不足の時代が続きますが、もう数年後には「密度の高い企業」「透明度の高い企業」のみが残り、そこで自らの技術を磨きたい、人間性を磨きたい、生きる歓びを感じたい・・・という若者が続々と集まって来る時代に成っているでしょう。否、そうしなければならないと思います。社会と共にリアリティのある感動を求めて、丸二も日々1mmの前進を続けて行きます。
※最近読んだ本
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<フランツ・カフカ>
学生時代、本が嫌いだった反動からか・・・最近は(合間の時間を使って)外国小説を手に取る機会が増えました。この数か月(まだ途中のものもありますが)読んだ本は。。。
「変身」フランツ・カフカ(チェコ)
「異邦人」アルベール・カミュ(フランス)
「みずうみ」テオドール・シュトルム(ドイツ)
「ソラリス」スタニスワフ・レム(ポーランド)
「太陽の黄金の林檎」レイ・ブラッドベリ(アメリカ)
「予告された殺人の記録」ガルシア・マルケス(コロンビア)
「悪魔の涎・追い求める男」フリオ・コルタサル(アルゼンチン)
「幽霊たち」「ムーン・パレス」ポール・オースター(アメリカ)
「夏への扉」ロバート・A・ハインライン(アメリカ)
「星を継ぐもの」ジェイムズ・P・ホーガン(イギリス)
「停電の夜に」ジュンパ・ラヒリ(インド)
いろいろな書評等を参考にして(なんとなく)選んだ本ですが、それぞれ個性的な作品ばかりで、大いに知的満足を味わうことが出来ました。カフカの「変身」などは、多分学生の頃、課題図書の一冊として流し読みをした程度だったと思いますが、今の歳に成って、カフカという誠実で生真面目で内省的な一人の小説家が書いた独白として知ると、心の震えを感じるのです。全く知らなかったドイツの作家シュトルムの「みずうみ」という短編は、美しくも幻想的なドイツの森の風景、遠い過去を想うノスタルジアに溢れ、とても大切な一冊となりました。ブラッドベリやオースターのようなアメリカ文学、マルケスやコルタサルのような南米文学には、こんな小説世界があったことに、実に驚きました。レムやハインライン、ホーガンのSF系は、まだ完全な興味の対象には成っていませんが、また別の作品を読んでみたいと思います。外国小説を読み始めると、やはり日本の小説にも心が動きます。森鴎外、夏目漱石、永井荷風は好きですが、今後は、泉鏡花、志賀直哉、室生犀星あたりに挑戦してみようと思います。長く後世の人に愛され続けている作品には、やはり何かが在ります。小説も音楽も絵画も映画も。その何かとは、やはり強烈な密度だと感じます。