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「のだめ」や「V6」を見て、思ったこと

最近、映画のCMが流れている「のだめカンタービレ」等のヒットで、最近クラシック音楽に対する人気が少しずつ上昇しているようで、私のような(数少ない)クラシックファンにとっては嬉しい限りです。よく考えてみると、18世紀から19世紀に創られた芸術が、21世紀の今になっても継承され、楽しまれているということ自体、とても考えられないことです。おそらく作曲した当人たちも、自分の作品が100年とか200年先の未来において、未来人たちに弾かれたり聞かれたりするなどと、夢にも思わなかったことでしょう。どちらかというと、多くの作曲家たちは、不遇で、経済的に豊かでなく、様々な厳しい境遇にいたはずです。でも、そのような過酷な人生の中から、不屈の魂の叫びや、美しい天上の調べが創造されたが故に、人類の遺産にまで昇華したのかもしれません。
ひるがえって昨今における様々な分野から生まれ出てくる作品はどうかと言うと、確かに今の時代を華やかに彩ることはできても、22世紀や23世紀まで生き残る「芸術」にまで成り得るものは・・・ほとんど無いと言って良いでしょう。すべてが自由経済という、「お金」を第一にまわっていく現代においては、芸術・芸能もビジネス化しなければ継続できないという現実がそこにはあります。つまり・・・「今すぐ」「極めて多くの人に」受け入れられる商品でないと、相手にされないわけです。時間をかけて、未来に向かって、評価されていくであろう真の芸術たちは、表舞台に出ることさえ難しいのです。
そのかわり、「今すぐ」「極めて多くの人に」受け入れられる作品を提供するアーティストたちは、ビジネス的な成功をおさめて、極めて豊かな生活を謳歌しながらも、次から次へと作品を生み出さなくてはならない悪循環に入っていきます。誰かの売上のために、誰かの利益のために・・・。経済的に豊かになって、逆境の時代には溢れるほどあった(初期の素晴らしい作品を生み出したであろう)インスピレーションも枯れはじめ、ただ時代の猛烈なスピードに合わせるためだけに、作品を羅列し、消費されていく。そして才能も消費されていく。これでは、22世紀や23世紀まで遺すどころか、自身の人生が終わるまで持たせることすらできない状況なのかもしれません。
この世の中にある自然や芸術への関心は、いつの時代でも高い次元で存在していますが、どのような経済体制の中でも、そのような才能、創造力を持った人材に光が当たる社会にしていかなければと思います。優れた芸術作品は、直接「天」と結びついて創造されているはずですから、そこからは何かしらのヒントがあるように思います。たったひとつの音楽からでも、生き方、意識の持ち様、楽しい気持ち、ワクワクした感情、新しいアイデア、すばらしい人間関係の創り方等の叡智が聞こえるかもしれません。
いま、確かに世界の経済は大変な状況にありますし、どんどん経費削減に向かっていくとは必至です。でも、その国の文化や芸術を守り、さらに新たな才能を生み出すことに対して、積極的にならなくてはなりません。最近「V6」というジャニーズのタレントたちが、日本全国の名産品を探して食する番組をやっていましたが、日本の各地には素晴らしい食産物があり、それを生のまま、あるいは焼いたり、煮たり、茹でたりして、おいしく食べられます。このような自然という最大の資産があるのですから、本当にみんなが安心して、コストを掛けずに暮らせる社会は、多分できるはずだと思います。安全に、その国(土地)で採れる自然のものを食べて、スローに生きて、そしてみんなで才能を持った人たちをサポートしていく。そういう心の余裕が、次の時代・次の世紀を創造していくと思うのです。
建築も、ひとつひとつが、芸術です。住む人の、考え方や精神性を映し出すオブジェです。街とは、家や建物という芸術作品が建ち並ぶ無料の美術館であり、テーマパークです。そのような意識を持って、住まいを建てたり、ビルを建てることも、これからは重要でしょう。美しい街並みは、美しい心をつくり、美しい考え方を生み出します。建築は、まさに100年以上の時間、存在し続ける芸術です。だから、これから始まる本当にスローな時代こそ、建築に花が咲く時代だと思います。