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21世紀のための前奏曲

21世紀に入って、早くも10年が終わろうとしていますが、これはオペラで云うところの「前奏曲」にあたり、いよいよ来年から「第一幕」が始まります。前奏曲は、これから始まるドラマや登場人物を暗示させるモチーフで構成され、それを聴くことによって、オペラ全体の印象が解かるものです。
ドイツが生んだ巨大な作曲家リヒャルト・ワーグナーのオペラ(楽劇)の数々の前奏曲は、それ自体が無限旋律の大河であり、壮大で深遠な物語を予感させるものです。有名な楽劇「ニーベルングの指環」は、極めて特殊な作品で、上演に4日間掛かります(約14時間)。序夜「ラインの黄金」、第一夜「ワルキューレ」、第二夜「ジークフリート」、第三夜「神々の黄昏」という4つの作品で構成され、序夜「ラインの黄金」が前奏曲的な位置付けとなっており、この壮大な物語の起点・原因を示し、すでに結論を暗示しています。
さて、そうなると・・・「21世紀のための前奏曲」を(10年も掛けて)聴くことができた私たちは、これから始まる「第一幕」「第二幕」「第三幕」を暗示(予感)させる出来事に、すでに出会っているわけです。であるならば、おそらく「大変革」となるであろう21世紀の方向性は、見えて来たと思います。
「資本主義が終わり、何か新しい社会システムに変わりそうだ」「エコロジー、環境、自然との共生の時代になる」「インターネット、IT、情報革命がもっと進む」「癒し、健康、精神世界が最大のニーズになる」「農業、林業、第6次産業が花形産業になる」「医療技術の進歩」「国や政治が弱体化し、個人の時代になる」「テロ、紛争、政情不安は終わらない」「異常気象、天災地変の多発」「宇宙開発の進歩」「量子力学、新しい科学の時代へ」「戦争経済VS共生経済の戦い」「円高・ドル安」「中国・アジアの時代」「日本食ブーム」「木・水の時代」「教育の問題」「宗教から信仰へ」「真の幸福の追求」・・・。
この10年間を思い起こすだけで、多くのキーワードが頭に浮かびます。良いこともあれば、悪いこともあります。ただ思うのは、世の中は間違いなく「良くなっている」と云うことです。確かに日々のニュースだけを見ていると、悪いこと、凶悪なことばかりが起きているように感じます。でも、だからと言って、(戦国時代と比べて)(龍馬の時代と比べて)(二つの世界大戦の時代と比べて)(戦後復興の、物が無い時代と比べて)今がどうかと言うと・・・今の方が明らかに豊かで幸福です。良い時代です。
それなのに、私たちは不平不満を言う。戦乱の時代を生きていた人々にしてみれば、「今がどれほど幸福か!」ということだと思います。ですので、この「21世紀のための前奏曲」には、何か面白い仕掛けがあるように思うのです。つまり、この曲の中に含まれた多くのモチーフの中で、プラスの曲調に意識を合わせるのか、マイナスの曲調に意識を合わせるのかで、その後のドラマ全体のストーリーが(個人単位で)変わってくるような気がするのです。
聴衆の全体意識によって物語の筋が変わるなんてことは、通常の上演ではありえません。また、観る人ごとに筋が違うことも、ありえません。でも、この「21世紀楽劇」では、そのような(変な)仕掛けがあるかもしれません。であるならば、今起きている事象(世界単位でも、個人単位でも)の中で、「いいなあ~」「楽しいな~」「すごいな~」「面白いな~」「素晴らしいなあ~」と思えることに意識をフォーカスして行くと、面白い21世紀物語が生まれそうです。
私たちは、そこを試されているような気がします。一見、困難に見えるようなフル・メニューを前に出されながら、それをいかに美味しい味に変えてしまうか。この10年間の前奏曲は、困難の「てんこ盛り!」でしたから。だからこそ、きっと、そのような仕掛けが隠されているんだと思います。
今、お笑いが流行っているのも、ある意味、「嫌なこと」「つらいこと」を、「笑い(というプラス側)」に転換させる技術が(無意識に)求められているからかもしれません。重い病気の人が、落語や漫才、お笑い芸人のショーを見て大笑いしていたら、病気が治っちゃったという話もよく聞きます。
このようにして、「21世紀のための前奏曲」は、そろそろ終演です。そして、暫しの休憩の後、いよいよ「第一幕」が始まります。笑いでいっぱいの喜劇になるか、戦いの大スペクタクルになるか・・・。丸二の私たちは、豊かさと幸福感で満ちた、温かい「建築造り」の物語を生きて行こうと思います。