2012.02.12
良心宇宙
昨日、録画していた映画「光の旅人 K-PAX」を観ました。自らを宇宙人と名乗る男と精神科医とのお話ですが、最終的に本当の宇宙人だったのかどうかの答えはありませんでした。でも私は、この人物(=人間)の中へ、宇宙人の魂が入った(ウォークインした)のではないかと勝手に想像しました。この人物には、極めて凄惨な事件によって愛する家族を失った過去があり、その結果自らの命を絶つ状況に至ったのですが、その瞬間、別次元のある意識が彼の中へと入り込み(ウォークインし)、内側から彼を救い、最後はそれを見届けて去って行ったのではないかと。
もちろん映画ですので、非現実的なドラマです。でも、人間が創り上げるあらゆる事象(物語も含めて)には、何かしらの比喩が含まれているとも思います(意識的であれ、無意識的であれ)。宇宙人がいるかいないかは別にしても、誰もが等しく保有する「良心」という世界は存在すると思います。それは、無限の広がりを持った宇宙空間のようなもので、誰の心の中にも、その無限の「良心宇宙」へアクセスできる端末が在るのではないかと。でも、そのアクセス機能の性能が、人(生き方や経験)によって様々なのかもしれないと。
人間は、(時に)この「良心宇宙」との通信を遮断してしまい、糸の切れた凧のような人生を歩んでしまいます。それでも、この「良心宇宙」は、全ての人間に対し、平等に存在していると思います。映画では、その回線を回復する存在として、未知なる生命体を描いていましたが、実際の私たちの世界では、それは「自分自身」でやらなければならないことです(そこが厳しいところです)。
誰の心にもある「良心世界」をいつも意識し、その回線を切らさず、その「良心世界」の情報に耳を傾けて生きて行くことが、21世紀の生き方のように思えてなりません。昨日、別の録画番組で「坂本龍一×岩井俊二」の対談を観ましたが、今の世の中は本当におかしくなって来たということを、もう誰もが理解していることが分かりました。笑ってしまうくらい、どうしようも無いと。
坂本龍一氏は、「モア・トゥリーズ」という森を守る素晴らしい運動をされていて、私たちも心から共鳴し、勉強をさせていただいております。そのような高い意識や志を持つ方々のお話をお聞きすると、結局は、人としての良心の問題ではないかと気づかされます。今までは、この「良心宇宙」の声を無視しても、うまくいった(成功した)時代だったのかもしれません。でも、これからはそうはいかない。本当に「良心宇宙」との通信を行い、その声に誠実に耳を傾けていかない限り、人や社会、国家は、無くなってしまう。映画のような助っ人は、実際は来ないのだから。
そう考えた時に、この時代の大変革の意味がよく見えてきます。とてもシンプルなことで、私たち一人ひとりが日常(生活、仕事)の中で、良心に従って生きること。ただそれだけではないのかと。そこを試されているのではないのかと。その一人ひとりの良心の総和によって、良き世は生まれる。建築も同様で、建設作業に関わる一人ひとりの思いによって、良き建築が生まれるのだから。
これは、宮澤賢治の有名な言葉「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」へも通じます。一人ひとりの良心の粒が全体を造り上げ、その結果として、良き社会が生まれ、個人の幸福へと戻って来る。一人ひとりの「良心宇宙」との交信は、世の中(全体)をより良くすることで、個人をより良くする形へと、変容していくものなのでしょう。
これからは決して難しい時代ではなく、極めて簡単な時代に成るということのようです。国も政治家も、そして私たちも、よりシンプルに「良心宇宙」との回線をより強固にリフォームしていくことです。そうすれば、自ずと様々な問題は解決していくのでしょう。よって、(映画のような)宇宙人は、既に一人ひとりの心の中に「在り」、毎日、一生懸命に「良心宇宙」との回線を直してくれているのかもしれません。そう考えるだけで、何となくワクワクしますね。