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宮崎駿監督と東京オリンピック2020

宮崎駿監督の引退会見を見て、とても心に残る言葉がありました。自作の映画を通じて、子どもたちに伝え続けたメッセージは、「この世は生きるに値する」だった・・・。ジブリ映画は、単なる子ども向けの冒険アニメではなく、深遠な精神性と隠喩を内在しています。私が宮崎アニメで最も関心を持ったのは、「千と千尋の神隠し」でした。あの作品を映画館で観た時、これは(人間が)考えて作ったものではなく、天空からの啓示によって創造された「ビジョン」ではないかと感じたのです。奇妙なトンネルを抜け、両親と別れて、一人生きねばならなくなった少女(千尋)は、自身の力で(懸命に)希望を見出し、元の世界へ戻ります。このような暗いトンネルを挟んで、「実」の世界と「虚」の世界が結ばれたのですが、私たちはきっとその両方を(交互に)生きながら、長き成長の旅を続けているのでしょう。そう考えてみると、千尋が迷い込んでしまった異空間世界とは、もしかしたら彼女自身の過去生の1つだったのかもしれません。今の自分は、過去の自分の積み重ねで形成されています。よって未来を創るのは、今(未来から見た過去)の生き方次第と成ります。主人公の千尋は、(いつかどこかの時代で)とても辛くて悲しい時を過ごしたのでしょう。でもその経験のお蔭があって、今の幸せを得ています。この世で生きるとは、経験を積むためのスタディであり、何一つ無駄なことはありません。長い視点で必ず帳尻が合います。今の苦しさは未来の幸福の種。苦しければ苦しいほど大輪の花が咲く。だから、この世は生きるに値する。
2020年の東京オリンピックが決まりました。先ずはお祝いしたいと思います。ただ、日本の最終プレゼンテーションをTVで見ながら、実は複雑な思いがありました。日本のプレゼンは確かにとても素晴らしく、感動的でした。一体感もありました。同じ日本人として、招致メンバーの方々の苦労と努力には心から敬意を表します。けれども反面、このまま東京に決まって良いのだろうかと云う思いもありました。福島の原発問題や東北の復興を後回しにして、(一部の地域や企業の利益の為の)イベントに注力して良いのだろうか。日本よりも経済状況の悪い国に譲るべきではないか。けれども、オリンピック開催の勢いが、かつての高度成長を遂げた日本復興のシンボルと成り、東北の復興や、更に強固な首都を造ることに繋がるのであれば、それは確かに良い事だ。けれども、今後の世界情勢の悪化によって、今度は東京がテロの標的に成るリスクも生まれるかもしれない。TV番組で、日本中が喜んでいる(様な)映像を見ながら、思考の整理が必要と成りました。
ただ1つ確かなのは、東京でオリンピック関連施設等の建設が始まると、東北をはじめとする全国の建設作業者が東京へ集中します。それにより東北の復興はさらに遅れてしまう可能性があります。現時点で、建設作業者の人手は不足気味です。リーマンショック以降、多くの建設業者が廃業をしたからです。再び景気が回復して行けば、ゆるやかに人手は戻って来るのですが、オリンピックという大事業に成ると、それに追いつけるかどうか。国や地方が建設業者を大事にして来なかったツケが、結局自分自身の首を絞める状況を招いてしまいました。けれども日本の建設業者は、そのような状況の中においても、再び新たな道を探して、社会に貢献します。つまり日本の再建は、建設業者の手によって実現するのです。東京オリンピックが決まった以上、日本中の建設業者が(今こそ)立ち上がり、東京オリンピックの成功と東北の復興と第2の高度成長への狼煙を上げなければ成りません。さらには(今後、予測されている)大地震等の災害にも(各地域で)備えなければ成りません。そのような方向性を持って、私たちはこれからの時代を切り拓いて行くのです。結局最後に社会を支えるのは、(かつて)3Kと言われたアナログの仕事なのです。現代の若い人たちには、ここに気付いて欲しいのです。宮崎駿監督の仕事は、毎日、紙とペンに向き合うアナログ作業です。最後は人の「手」を超える仕事はありません。
いずれにせよ、2020年に日本は立ち直っていなければならない。今回、日本はそういう約束を世界とした訳です。これは重いことです。退路を断ったと言えます。2020年まであと7年しかありません。その間に、首都を(大地震に強い)強固で安心安全な都市に再生し、東北の被災地の復興を完全に終え、福島原発の汚染水問題も(除染技術等で)完全に収束させ、さらには全国的な経済成長を軌道に乗せ、財政再建の目途を付ける。これが出来ないと日本は信用を失います。でも同時に、このような約束をしたことで、実現する可能性も高まります。私たちは、これから7年の日本が、(一部の利益ではなく)全体の利益に成る様に注意しながら、2020年を迎えて行きたいと思います。
さて、オリンピックの最終プレゼンテーションを見ながら、もう1つ感じたことがありました。それは、このような素晴らしい一体感を持って事に当たれば、日本は(間違いなく)勝てると言うことです。日本はチームワークの国であると云うことです。お互いの役割を認識してチームプレーに徹すれば、数十倍の力を発揮するのです。これを外交にも生かして欲しい。同時に福島の問題についても、このような一体感で臨んで欲しい。国と東電と地元が一体と成って取り組めば、もっと早く解決の道は生まれたはずです。「オリンピック」で出来て、「フクシマ」で出来ないはずはありません。また、今回のプレゼンの最初を飾った高円宮妃久子様のスピーチは本当に素晴らしかった。東日本大震災における各国からの支援に対する感謝の意を表されたのですが、心が震えるお言葉でした(ここで「日本に決まった」と感じました)。世界の(日本の)皇族に対する尊敬心は、想像以上のものがあります。それだけに今回の決定は、日本の国民全員の大きな責任に成ったと感じます。でも、それで良いと思います。これから日本は(歴史に残るであろう)非常に大きな難局を乗り越えて行くでしょう。それが「戦争」でなく、「オリンピック」で良かったと言えるようにしたいのです。私は1964年の東京オリンピックの年に生まれました。ですので、日本の成長と共に自分自身の成長もあります。日本中の人々が「2020年をどのような状態で迎えるか」と云うビジョンを持って、この7年間を生きてはどうでしょうか。今の自分とは全く違う(より素晴らしい)自分自身に成っているかもしれません。そう考えるだけで楽しいです。だから、この世は生きるに値するのです。