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内側の世界

再びマレーシア航空機の事故(事件)が起き、多くの命が犠牲に成りました。真相は不明ですが、これが大きな国際的な問題等(戦争)に発展しない様に心から祈ります。国内では多くの誘拐事件や殺人事件が発生しており、幸い岡山の事件は無事保護と成りましたが、このような普通の生活の中にこそ紙一重の危険が潜んでいることを自覚しなければ成らない時代なのでしょう。そうは言っても、怯えながら生活をする必要性も無く、それでも(諸外国よりも)安心で安全な日本に生まれたことに感謝して、自ら(何かに巻き込まれる様な)種を撒かず、この日々を懸命に生き抜いて行くことしか無いのでしょう。私たちは、どうしても世の中(外側)で起きている事象に心を奪われ、あるいは恐れ、自分自身への過度な(精神的な)負担や圧力を強いるものですが、何があっても、自分自身の心(内側)を大切にして行くことも同時に大切なことかもしれません。
先日、NHKの番組で「人手不足」を特集しており、現在、最も人手が足らない職種として「型枠大工」が紹介されていました。これは建設業者として既に実感していることです。型枠大工さんの仕事は本当に重労働ですので、長引く不況に加えて、リーマンショック以後の深刻な建設業界の低迷によって、職人たちが離れて行ったのでしょう。結局その後、景気が(ほんの少し)回復基調と成っただけで、急激な人手不足に陥りました(この2年がピークだったと思います)。最近はやっと受給バランスが取れて来たところですが、(過去の経験からすると)この景気回復がまた一段落すると、あるいは(各ゼネコンの)労務的リスク回避の為のリストラ(企業収縮)策等によって、再び「人余り」へと転じる可能性が無いとも言えません。いずれにしても、そのような流れを繰り返す過程の中でも、建設業に多くの(次代を担う)若者たちが入ってくる環境を、私たちは造って行かなければ成りません。
建設業は、(このようにして)それぞれの時代における経済面の影響を過分に受けてしまう傾向がありますが、(同時に)人間が生きて行く為に必要不可欠な産業=「衣(医)食住」の重要な一角を担っており、(この世界に人類が存在する以上)決して無くならない職業であることも事実です。どのような時代に成っても、国や地域は建設業を存続させなければ成らない。そういう意味では、外部環境の変化に無関係に、社会全体が守るべき存在でしょう。しかしながら、ここ数十年来のデジタル化時代の大波の中で、そのような本質的な認識が失われてしまった・・・。これこそが「人手不足」の真の原因だったと思います。いかなる時代になろうとも、守って行くべきものとは何か。そのような長期的視点、あるいは理念こそが大切です。まして、地球環境の激変(自然災害)の時代が始まる中で、日本の優れた建設産業の技術や人的資産が枯渇してしまっては、国家の存亡にすら関わります。かつてマスコミによって「3K」というレッテルを貼られ、それによって「若者離れ」が起きてしまったことが、(今思うと)最大のミスだったと思います。時代を超えて生き続けるアナログ的な産業(建設業、農業、林業、介護・・・)を大切にする時代がやっと始まりました。
ところで最近のニュースを見ると、これから日本中で多くの過疎の町や村が消滅すると報道しています。確かに、人が住まなく成れば、町や村は消滅するでしょう。便利と効率だけを求めた結果の当然の帰結です。結局、すべてはバランスではないでしょうか。便利と効率も大事ですが、それだけは割り切れない面も同時に大切です。陰と陽のバランス感覚。あらゆる物事には(昼と夜のような)二面性が在り、例えば人間の意識も顕在意識と潜在意識の両面があります。お互いを否定し合うのではなく、反対の性質のものをミックスして、新しい価値を生み出すこと。これが自然の摂理であり、道理ではないでしょうか。都会と田舎、デジタル産業とアナログ産業、外側と内側、肉体と精神。みんな2つで1つ。このような両面をバランス良く成長させて行く為には、やはり先ずは、自らの内側(心)を確かなもの(安心、安定)にすることだと思います。けれども、それが一番難しいですね。様々な事柄を経験できる今の時代は、自身の内側を鍛えるにはモッテコイの環境なのかもしれません。
※映画「エレニの帰郷」
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「旅芸人の記録」「霧の中の風景」「永遠と一日」「エレニの旅」等で有名なギリシャの映画監督、テオ・アンゲロプロスの遺作「エレニの帰郷」をDVDで観ました。とても美しく、素晴らしい映画でした。主人公(映画監督)の母、エレニの半世紀に及ぶ物語。若きエレニはソ連当局に捕えられ、シベリアへ抑留された後、主人公である息子(主人公)と再会する。エレニ、エレニの夫、シベリア抑留時代にエレニを支えたイスラエルの男性、主人公、そして主人公の娘が織りなす人間模様の中で、エレニは安らかな死を迎える。ストーリーを追うとこのような説明しか出来ないのですが、実は言葉だけでは全く映画の本質に迫れないのです。アンゲロプロス監督の独特の超長回しと、(その間に)時空を超えて行く映像美の中で、現実と幻想のどちらかの見分けの付かない不思議な感覚を味わいながら、ある一人の人間の一生とその精神世界(内側)を追体験していく物語。今回は雪のシーンが多かったのですが、それがまたとても美しかった。一般的な映画とは一線を画しているので、好みは分かれると思いますが、私にとっては大切な一本の映画に成りました。交通事故で亡くなってしまったアンゲロプロス監督は、その時次回作を撮影中でした。本当の最後の作品を観たかったです。