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こころを打つ

小さい時から読書が嫌いで、漫画以外の本一冊を読み切ることができなかった頃、ついに最後まで読破することが出来た最初の長編小説が、夏目漱石の「こころ」でした(確か高校時代)。それに気を良くして、夏目漱石の小説はほぼ全部読みました。でも、難しい字や意味の分からない文脈はドンドン飛ばして行ったと思うので、ただ何となくストーリーを追っただけかもしれません。ただそれでも、あの何とも言えない文章の奥底から感じられた独特の空気感や時代性、そして主人公のこころの動きや喪失感は、映画やテレビや漫画では到底味わうことのできない種類のものであるということを知りました。遺作の「明暗」も非常に長い小説で、しかも未完のまま終わるのですが、「ああ、ここで終わりなのか・・・」と思いながら、何度も最後の数頁をめくり直した記憶があります。
今、WOWWOWで市川崑監督特集をやっていて、映画「こころ」(白黒映画)を放映していました。そもそも夏目漱石の「こころ」が映画化になっていたとは知らず、しかも市川崑の監督作品だったというのも初耳で、少々ビックリしたのですが、これは見てみようと。感想としては、あの小説を映画にしてしまうと、こんなにシンプルで単調な物語だったのかと思うような印象で、ある程度想像はしていましたが、やはり夏目漱石の世界の映像化は難しいものだと感じました。それでも、主人公である「先生」のこころの苦しみは、現実の出来事として、共感できるものでした。
また最近、BS放送を見ていたら、とある日本のロックバンド(かな?)のライブをやっていて、何となく見ていたら、突然引き込まれるような感覚になって見入ってしまった・・・。と言うのも、どこかで聞いたことがあるような無いような曲を、男性ボーカルの人が強い思いを込めて歌い上げている。それがなかなか素晴らしい。ああ、なんていう曲だろう。誰の曲だったろう。このボーカルは誰だろう。なんていうバンドだろう。あとで番組表を見たら、バンドは「エレファントカシマシ」と分かりました。曲はこの人たちのオリジナルだろうか。いや、そんなことはないだろう。結構有名な曲のはずだ。と思って、ネットで調べたら、多分これだろうと分かりました。ユーミン(松任谷由美)の「翳りゆく部屋」。そう言えば、そうだ。何度か聞いたことがある。でもこんなに印象に残ったことは無い。と言うことは、この「エレファントカシマシ」がすごいのだろうか。ライブの他の曲を聞いても、詩が文学的だったり、激しかったり。多分、一般大衆的には受けない傾向のバンドだと思いますが、私はそういう方が好きです。
小説にしても音楽にしても、自分自身のこころを打つものと出会うと、無性に嬉しくなるものです。「それが何だ」「たかが小説じゃないか」「たかが音楽じゃないか」と言われることも多々ありますが、そういうものとの戯れが、私の人生の中の「ある部分」を支えているのも事実です。私たち、丸二が目指しているものも、実はこの「ある部分」に関わろうとしています。ただ(物理的に)建物を建てるだけではなく、そこに「人のこころ打つ何か」を含めていきたい。それは、受け取る側が感じる部分なので、必ずしも万人のこころを打つとは限らない。それでも尚、「人のこころ打つ何か」を模索して、ご提案をして行きたいのです。家を建てる、マンション経営を行う、リフォームをする・・・みんな大きなお金を使います。だからこそ、「モノ」+「こころ」の両面をバランス良く整え、ご縁をいただいた全てのお客様の人生の流れが良い方向へ流れるようにしたいのです。
私たちは、以上のような考え方や思いをお伝えするのが、まだまだうまくありません。でも愚直に続けていきます。日々1mmの前進です。