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アナログの時代

今回のトヨタのリコール問題を通じて知ったのは、今の車のブレーキ・システムが複雑な電子制御によるものだということです。足で踏み込むという物理的な動作が、そのままタイヤを止める力になっているというのは思い込みで、実は複雑なプログラミングによって、ブレーキが作動しているんですね。
私は、車の電気化には賛成ですし、ハイブリッドなどのような中間的なものでなく、本格的な電気自動車が早く世に出て欲しいと思っていますが、エンジン(動力)以外の機械的なメカニック部分は、できるだけ単純な方がいいですね。その方が、運転をしていて、音や振動や効き具合から異常が感じられますし、何となく安心感があります。すべて電子制御になってしまうと、そういう感覚が無くなり、修理もできにくくなり、何かの誤作動や電気製品からの電磁波等の影響で、突然狂うことも考えられ、ちょっと怖いです。
デジタル化の波に乗って、人々の生活を快適にするために、昨今さまざまな商品開発が行われていますが、今後はデジタルとアナログの両方の良さ、あるいは電子式と機械式の両方の良さを、うまく統合していく必要があると思います。建築は、そういう意味では、アナログ的であり、現場で人が手造りで建設していくものです。姉歯問題のようなことも、本来、現場で鉄筋の本数や太さを見て、アナログ感覚で、「おや?」と思うはずです。そういう意味で、太古の時代から継承されている建築は、極めて単純明快で、最も安心・安全な技術体系ではないかと思います。
これから電子化が行くところまで行くと、その後はむしろ、このような人力によるアナログ的な製造工程、アナログ的な商品に価値が移っていくのではないでしょうか。造る人によって違う商品。絵も、芸術も、建築も、みんなそうですね。現在の街の店頭に並んでいる商品は、みんな1ミクロンの誤差も無い、全く同じものです。そういうモノは、そういうモノとしての価値がありますが、そうではないモノも同時に、必要なのです。
だから、建築も、プレハブ式の精密な組み立て物よりも、現場で職人たちが気持ちを込めて造る方が良いいのです。絶対に他には無い建物が生まれます。今の時代、夏は猛暑、冬は極寒の中で、コツコツとものづくりが出来る人は極めて希少です。そのような人たちの温かい心が、有機的に、建物に宿ります。建物にも生命があるからです。だから、無機的な組み立てではなく、人の手によるアナログな建築を大事にしてもらいたいと思います。それが、新しい文化の創造です。