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日本と感謝の歌

丸二の経営理念は「感謝」ですが、感謝の気持ちを表した有名なクラシック音楽が、実はあります。ベートーヴェン作曲:交響曲第6番「田園」の終楽章(第5楽章)です。田園交響楽は、ベートーヴェンが書いた9つの交響曲の中でも、最も穏やかで牧歌的気分に満ちた名曲です。その終楽章は「牧人の歌~嵐のあとの喜ばしい感謝に満ちた気分」という副題のとおり、第4楽章の「雷雨、嵐」が去った後の感謝と喜びの田園風景を歌ったものです。
もちろん全曲素晴らしいのですが、特にこの「感謝の歌」は、詩も無く、管弦楽だけなのに、本当に感謝と喜びの気持ちが、聴く人の心に歌のように響いてくるのです。多分、ベートーヴェンの他の楽曲と比べると、やや単調な楽章ですが、素晴らしい演奏で聴くと、とても感動しますし、涙が出そうになります(逆に、演奏がいまいちだと、厭きやすいですが・・・)。
耳が聞こえなくなり、とうとう死を覚悟し、遺書まで書いたベートーヴェンにとって、森や田園に木霊する音たちは、もはや心の中でしか響いていなかったはずです。その音たちを、今、ここにあるかのように、ひとつひとつ優しく積み上げて、感謝の気持ちの大聖堂に築き上げたことは、常人では不可能だったと思います。そういう背景を思いつつ聴くと、また感慨深いものです。
さて、その「素晴らしい演奏」ですが、私が好きなのはこの2枚です。
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ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』、第6番『田園』、他 ベーム指揮ウィーン・フィル(1977年 東京ライヴ)
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ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』、ワーグナー:『ワルキューレの騎行』、他 ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1979年 東京ライヴ)
偶然にもこの2枚、共に1970年代後半の東京ライヴです。ベーム指揮ウィーン・フィルという伝統的ドイツ・オーストリアの温かく美しい響きと、旧ソ連のムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルという厳格で強固な響き・・・この全く相反する名演が、ほぼ同時期にわが日本で鳴っていたのです。それだけでも何か不思議なものを感じます。
実は、他のCDでも、東京公演のライヴがたくさんあって、しかもとても素晴らしい演奏が数多く残っています。これは一体どういうことなのでしょうか・・・。少なくともプロですから、演奏を間違うことは無い訳ですし、「特別、名演にしなくてもいいや・・・明日もやるし・・・」などと考えてもおかしくないと思います。それなのに、日本まで来て、最高の演奏をするというのは・・・。
それはきっと・・・日本人の意識の高さ、感性の良さ、真摯な姿勢、歓迎の精神、おもてなしの心、思いやり・・・そんなものに触れたことによって、大いなる感謝の思いが高まり、結果的に一世一代の名演を生み出したのではないかと思うのです。一方、すべての文明の起源(源流)は日本にあるという説もあるようですから、世界の芸術家達は、日本という国の存在を(無意識に・・・)神聖な場所として捉えているのかもしれません。ただ単に、チケットが高く売れるからという理由ではないような気がします。
これで、日本と感謝の歌が結びつきましたが、日本には「ありがとう」という素敵な言葉があります。今、確かに日本は苦しんでいるように見えますが、この日本独自の精神性を呼び戻しさえすれば、すぐに世界に感謝される存在になれると思います。経済から解き放たれているアーティスト達の純粋な目には、もう見えているはずです。さらに良い時代になります。田園交響楽の聴きながら、そんなことを思いました。