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映画「街の灯」と般若心経

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スカパーで録画した、チャップリンの名作「街の灯」を見ました。昔、何度も見た記憶がありましたが、各シーンを断片的にしか覚えてなく、今回あらためて全体像を理解することができました。本当に素晴らしい作品です。チャップリンの動作や表情は見事で芸術的。現在のお笑いタレントさんに、ぜひ見てもらいたいものです。命をかけた芸と、世間に迎合するための小手先のセンスとの差は、もう歴然としています。
物語も楽しく、愉快で、深く、そして悲しい・・・。盲目の美しい花売り娘のために、わが身を捨てて、目を治すためのお金を得ようとする浮浪者チャップリン。何とかお金を娘に渡せたものの、自分は警察に御用となる。そして最後の有名なシーンは、もうどうしようもなく、微笑みと悲しみが交錯する真実の瞬間。
娘は、目を治すためにお金を出してくれたのは、きっと紳士のお金持ちと想像していたでしょう。その彼女の眼の前に現れた、出所してきたばかりの浮浪者チャップリンは、彼女の目が治ったことを知り、心から喜び、微笑み、そして立ち去ろうとします。娘は、このかわいそうな浮浪者に花を一輪あげますが、その時触れた手の感触、服の感触、そして顔の感触・・・。
「この人こそが、あの人」と知った時の、彼女の何と複雑な表情。この世の全ての人間が持っている「何か」が、私たちの心を突き刺します。そして、チャップリンの嬉しくも悲しい無垢なる表情のアップのまま、この映画は「完」となります。
そこには、何か・・・般若心経の「色即是空、空即是色」の世界を感じます。見えるものは「空」であり、見えないものこそが「実体」であると・・・。目が見えない(満たされていない)時、心は清らかに光り輝き、本質(実体)を捉えることができる。でも、目が見えるようになると(満たされると)、本質(実体)が見えなくなる。ここに、この世が修練の場として存在しているという、道理の世界を感じ取ります。
この「完」の後、彼女はチャップリンにどのような気持ちで、どのように話したのでしょうか。それは、見終わった私たち一人ひとりが、彼女に成り代わって、考えるべきことなのかもしれません。ただひとつ言えることは、そこにこそ「真の幸せとは何か」という永遠の問いに対する答えがあるように感じます。