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命綱の建築3

今回の震災による大津波の被害を受けた地区の中で、 「此処(ここ)より下に家を建てるな」という石碑の教訓を守った集落があり、実際に津波の被害を受けなかったことが伝えられています。明治、昭和の三陸大津波によって2度の壊滅的な被害を受けた宮古市重茂の姉吉地区にその石碑はあり、結果的に11世帯約30人の集落を守ることになりました。津波は先人の教え通り、石碑より海側で止まったとのことです。
古き先人からの教えが、こうして今、人々の生命を救うことになるとは、まさに時空を超えた(目には見えない)救出劇だったと思います。本当に正しいことや、大切なことは、なかなか「その時」は分からないものです。今こうして事が起こり、はじめてその意味を理解します。おそらく、このような石碑は別の場所にもあったのかもしれません。先人(御先祖)たちの(子孫やこの地への)深い愛情を、感謝の心で、受け止めた・・・。そのような素直な心が、未来の自分自身や子孫を救うのかもしれません。
ところで、今の私たちは、子孫たちへ何か「石碑」を残しているでしょうか。自分たちの子どもや孫の世代、そしてもっと先の子孫たちへ、大切な石碑、メッセージ、贈り物を用意できているのでしょうか。先日、首相が浜岡原発の停止を(中部電力へ)要請しましたが、その他の日本全国の原発はそのまま維持のようです。原発の危険性については、様々な意見があり、実際のところは一般人ではよく分かりません。でも、福島の状況を目にした以上、原発の全廃への流れが国民の(本当の)総意ではないかと思います。
未来の人々を救う「石碑」を建てることが、いまを生きる私たちの世代の役割だと思います(原発は、その中で特に重要な問題だと思います)。日本の森が荒れ始めていること、今後も多くの災害が起こる可能性が高いこと、まったく新しい世の中の仕組みをつくる必要があること・・・他にもたくさんの課題が残っています。困ったことは、それらの全てに対する方向性(柱)が、未だ立っていないことです。ひとつひとつの課題をクリアーするには、本当に長い年月が必要です。よって、全てを解決することはできないでしょう。でも、せめて「このような世の中にしていくべき」という正しい方向性だけでも立ちあげておけば、次代への立派な「石碑」になると思います。
私たち(丸二)は、「いつまでも家族、子孫の生命を護り続けられる建築」を、謂わば「石碑」の代わりとして、地域に建てていこうと思います。これからも、自然災害は(全国的、地球規模的に)増えるようです。そのような厳しい自然環境の中で、住む人の安全、安心を第一に、その上に快適さ、豊かさを求めて、いまできることを懸命に進めて行きます。そのような「命綱の建築」は、これからの時代に向けての大きな方向性となり、多くの人々にとっての拠り所にもなると思います。建築とは、その土地の「柱」であり、住む人の心の「柱」であり、人々の精神とリンクします。だから私たちは、建築で良き社会を築いて行くことができると、信じています。