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生きる力

前のブログでご紹介した音楽家の冨田勲さんは、1932年(昭和7年)生まれですので、今年81歳です。また以前紹介した映画監督の大林宣彦さんは、1938年(昭和13年)生まれで、今年75歳です。大林監督は最近、「AKB48」の新曲のプロモーションビデオも手掛けました。政治の世界では「老害」と言われる年代ですが、クリエーターの世界には「老い」という概念は無いのかもしれません。今の若い人たちよりも、よっぽど頭が柔らかく、常に新しい挑戦を続けています。生きたいのに生きられない人がいて、生きられるのに死のうとする人がいる世の中で、歳を重ねる度に「生きる力」を加速させている人もいる。古き日本と新しき日本の2つの時代を駆け抜けて来た世代の凄みを感じます。
その「生きる力」の源泉は何だろうかと考えます。戦後の苦しい時代を生きながら、何か「とてつもない」大きな夢を抱き続けて来たのではないかと想像します。あまりにも苦しかったからこそ、「無限の夢」を持ち続けるしか生きる術が無かったのではないか。もしそうであるならば、現代の子どもたちは、中途半端な幸福の中に居て、「無限の苦しみ」も無い代わりに、「無限の夢」も無く、毎日同じ安全地帯を、ただ浮遊しているだけなのかもしれません。
宮澤賢治は、今で言うところの「スピリチュアル」な人間だったと思います。しかし、宮澤賢治ほど、現世において必死に生き切ることを実践した人はいません。今流行りのスピリチュアルのような浮遊した自己逃避では在りませんでした。常に現実の生活の中に、悩みや苦しみ、悲しみがあり、それを具体的に乗り越える実体験の中から、物事の本質あるいは精神性に肉迫して行ったのでしょう。冨田勲さんも大林宣彦さんも、宮澤賢治の次の世代ですが、「戦争」という「苦」の実体験を乗り越え、生き延びることが出来た分、感謝の心で「生」を謳歌し続けているのではないかと思います。
やはり、感謝の念が基礎ではないでしょうか。生きていること、生かされていることへの感謝の念の強さが、その人の人生を最終的に決定していると思います。素直な心で苦労を体験した人が最後は幸福に成るのも、そういう道理からではないでしょうか。これから、また苦労の時代が始まりそうですが、でもかつての戦時中に比べたら、まだまだ本当に幸せです。そのありがたみを感じながら、私たちも歳を重ねる度に、ますます「生きる力」を加速させて行きたいと思います。
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大林監督の映画「その日のまえに」。以前紹介した「この空の花 長岡花火物語」の1つ前の作品です。この映画も常識に囚われない摩訶不思議な作風で、賛否両論ありましたが、私は大好きです。映画の本筋と並行して、宮澤賢治と妹トシとの物語が重なり、最後は「銀河鉄道」と「花火」で昇華されます。この花火がきっと次の「この空の花」へ受け継がれたのでしょう。心静かで温かい映画です。「生きる力」の映画です。涙が止まりません・・・。