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クラウド・アトラス

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トム・ハンクス主演の映画「クラウド・アトラス」をDVDで観ました。これは、「転生」をテーマにした小説の映画化で、6つの時代を(輪廻転生しながら)生きた人々のそれぞれの人生を描いた作品です。監督はウォシャウスキー(姉弟)で、彼らの代表作は「マトリックス」です。でも私自身、「マトリックス」にあまり感動しなかったので、今回の「クラウド・アトラス」に対しても、特別大きな期待は持っていませんでした。ただ「転生」がテーマと言うことで、関心を持ったのです。
映画自体は「マトリックス」同様、映像は素晴らしかったのですが、6つの時代を行ったり来たりするので、何が何だか(誰が誰だか)分からない面もあり、「転生」そのものに対する探求や洞察よりも、スピード感あふれる壮大なアクション映画として見るべきものだったのでしょう。もう一度観れば、受け取り方は変わると思いますが、ここがハリウッド(商業)映画の限界かもしれません。でも「転生」を描いたという面において、興味深い点もありました。
それは、「悪人は6つの時代とも悪人として生きている」という点です。例えば、普段はロマンティック・コメディの主演が多いヒュー・グラントなどは、最後は人食い族にまで成ってしまい、これはこれでとても面白かったです。6つの時代を経て、一人の人間がどのような運命を辿ったかという視点は薄いので、あとは観た側で考えるしかないのですが、(あくまで転生がある前提ですが・・・)確かにそのような人生を繰り返し、その負のループ(堂々巡り)から抜け出せないことも現実的にあるような気がします。
一方で、トム・ハンクスにも悪人的な人生もあったのですが、6つの時代を経て少しずつ変化が生じ、6つ目の人生では大きな悲劇に遭いながらも、心穏やかな晩年を迎えています。そのようなマクロな視点で自らの人生を俯瞰した時、今の人生の「今」にはとても大きな意味があるように感じます。「今」をどう生きるかによって、今回の人生のみならず、その次以降の人生にも大きな影響が在る。陥りやすい(繰り返しの)負のループからどのようにして抜け出すか・・・。結局、主人公たちは(同じ時代を)同時に生きてはいますが、それぞれの人生のステージは少しずつ変化して行くのです。
そう考えると、仮に今が苦しくても(次の人生以降まで含めた)未来を良くすることは充分可能ではないかと考えます。その為には、今の環境の中で懸命に最善を尽くすことしかありません。その繰り返しによって、だんだんと負のループから脱することは出来るのではないか。それは多分、自分が思い描く理想像とは随分遠く離れているかもしれません。けれども、6つ先の人生まで含めたとしたら、先はまだまだ相当長いのです。今すぐは無理でも、時間を掛ければ必ず近づく。やはり毎日1mmの前進ですね。そう思って動き出せば、(案外)突然夢が叶ったりするかもしれません。逆に今すぐ良く成りたいと欲を出すと、なかなか負のループから抜け出せない。「人生、遠回り」と知ることで、むしろ不安は無くなり、必ず良きサイクルの中に移動できると思います。
最近、地元の大好きな本屋さん(ブックス・ルーエ)で「想定外」という本を見つけ、何となく読んでみました。この本で述べられていたのはただ1つ、「成功者は回り道をしていた」ということです。物事はすぐに(直線的に)叶うことは無く、必ず回り道や反対方向へ向かった時に、(思わぬ形で)成就している。ほとんどの人(会社)は、すぐに結果を出そうとしますが、それで成功した人(会社)はほとんど無い。苦労の中で、夢とはほど遠い内容を懸命に続けた(回り道の)結果、思わぬ形で夢が実現した。目先の欲を直接的に追いかけた人は、結果的には目的地からどんどん離れて行った。逆に(仕方無く)目的地とは違う方向へ向かったり、遠回りや回り道をした人の方が、不思議と目的地に着いている。
「カーネル・サンダースの教え」という本を読みました。有名なケンタッキー・フライドチキンのカーネルおじさんの物語です。カーネル・サンダース氏は、65歳で全財産を失ってから、「ケンタッキー・フライドチキン」のビジネスを始めました。それまでの人生は、解雇、失職、転職、裁判、逮捕、銃撃戦、大事故、火災、離婚、倒産、破産等の連続で、現在のお店の前にあるにこやかなカーネル人形のイメージとはほど遠いものでした。けれども、そこで経験した数々の偶然の中から、フライドチキンは生まれたのです。要は、「食う」ために懸命に(文字通り命懸けで)生きながら、壮大な回り道をして来た結果、思わぬ形で(全くの想定外で)成功を掴んだのです。何とも不思議な話です。結局、カーネル・サンダース氏の信条は「最善を尽くす」だったのですが、やはりこれに尽きるのでしょう。
最善を尽くしても、結果は良く成らないかもしれない・・・と人は不安に思います。確かにすぐに良くは成らないでしょう。けれども、それは必ず時間差で応援が来るはずです。一昨日、ついにイチローが日米通算4000本安打を達成しました。この偉業は本当に素晴らしいものだと思います。けれどもイチローが「4000本」という数字を、直接的に目指していたようには決して見えません。インタヴューでも話されていたように、むしろ数多い失敗に対して真摯に向き合って来た結果としての産物のように感じます。もし転生があるとしたら、イチローは過去の人生を含めて、壮大な時間を掛けて(=回り道をして)、「今」に辿り着いたのではないでしょうか。人からは「すぐ出来た」ように見えても、実際は悠久の時間軸を経ての業かもしれません。だとすれば、私たちは他者との(全く無意味な)比較を終わりにして、自身が歩んでいる「回り道」への価値を見出し、そのまま自分自身の道を(安心して)行くことだと思います。人間誰もが、回り道をしながらゴールに向かっている成功者であると信じて・・・。