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偽装表示問題で思うこと

一流ホテルにおけるメニュー偽装表示問題が起きました。大手で、有名で、イメージが良い、誰もが信用している場所で、このような事件が発覚する度に、一体私たちは「何」を見て来たのだろうかと考え込んでしまいます。誰もが安心と思うところほど、実体は「真逆」なのかもしれません。名の通った企業や人は、名前だけで信用を得られる状態を勝ち得ています。もちろん、そこに至るのには大変な努力と苦労と実績の積み重ねがあったはずです。そのような先人達が築いた信用、つまり「名前ブランド」に依存してしまったからなのでしょうか。
反面、名の無い会社や人は、中身で勝負するしか道はありません。特に建設業などは、昔から「手抜き」とか「欠陥」とか、常に疑いの目で見られることが多かった業界です。様々な法律や監理体制、あるいは役所の検査等、ありとあらゆる手立てを講じられて、徹底的に監視化の下で、建設作業が進められる環境と成りました。その分、様々な点検業務や書類提出、打ち合わせや中間検査も多く、作業効率がなかなか上がらないのも実情ですが、このような事件が起こる度に、「今や建設現場ほど偽装の起きにくいクリーンな場所は無いだろうな」とも感じます。
もちろん建設現場は工場とは違い、多くの人間(職人)達による手作業、手造りの世界ですので、機械(ライン)で均一の工業製品を作るシステムではありません。料理と同様に、そこには現場ごとの(ある種の)「味」が生まれます。けれどもその「味」の幅が、ある一定の範囲内に納まる為の基本的仕様や作業手順、補正手順等が細かく規定されています。その規定自体も、相当な安全率(余裕)を設けた基準です。地震国である日本の建築基準は世界一厳しいものです。安全の上に安全を見て、さらにその中で最も安全な数値の幅を設定しています。
そのような規制された環境の中でも姉歯事件は起きてしまったのですが、あれは建築の現場で起きたことでは無く、設計業務内で起きた事であり、しかも極めて特殊な事例であり、今回の偽装表記のように「ここでも」「あそこでも」と拡大する性質のものではありませんでした。けれどもあの事件の結果、日本の建物の構造設計はさらに強固と成り、同時に、設計確認体制も強化されました。これで設計段階におけるチェックレベルも上がったのです。建設現場はレストランの厨房とは違い、常に施主様や設計者、役所の担当者、多くの職人さん、あるいは近隣の方々の目に晒されています。そのことが良い意味での緊張感を生み出しているのではないかと思います。このようにして建設業界は、世間から厳しく育てられたお蔭で、立派に成長し続けているのです。
名も無い存在だったこと。厳しい目で見られて来たこと。会社も人間も同様ですが、このような困難な過程を経た者の方が、最後は強いのでしょう。今年大活躍の(プロ野球)楽天の田中将大投手も、甲子園(高校野球)での決勝戦再試合で負けた悔しさが、今の成果につながっているのかもしれません。苦難はその時はキツイですが、後に成って、自己成長へと結実します。ところで今回の事件は、国が定めている食品の表記方法にも及ぶのでは無いでしょうか。「売れるために」を優先させてしまった基準が、供給者側の意識を(全体的に)低下させてしまったのかもしれません。これからの商売は、「正直」がテーマに成るのでしょう。同時に消費者側も、良き商品の価値を認める文化も必要に成るのでしょう。このような事件があって、私たちも多くのことを学べます。やはり社会も人生も、全てが学びです。だから日々に感謝して生きねば成りません。みんなで学び合って、助け合って、良き未来を築きたいと思います。