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日本の道

今年のゴールデンウィークは好天に恵まれて、各地の行楽地も賑わいを見せた様です。TVニュースを見ると、どこへ行っても大変な人混みの様子でしたが、街や観光地に活気が生まれて来るのはとても良いことだと思います。目につくのは、やはり外国人観光客の姿で、日本の「観光立国」へ向けての大いなる一歩が踏み出されたような気がします。今朝のニュースでは、「世界経済フォーラム(WEF)」が6日に、最新の「旅行・観光競争力報告書」を発表したとのことで、そこで日本は141カ国中9位でした。ちなみに1位はスペインで、次いでフランス、ドイツ、米国、英国、スイス、オーストラリア、イタリアと続き、9位に日本、10位にカナダです。日本は、文化的な観光資源、安全、衛生、交通インフラなどの評価が高く、価格競争の点は評価が低かった様です。それでも世界9位とは、自分自身のイメージよりも随分高く、今後の更なるランクアップに期待が持てます。
最近のいくつかの経済番組を見ても、日本の様々な分野における技術力やマーケティング力の進化には目を見張るものがあります。地方の落ちこんでいた大型フラワーパークを再生させた女性理事長は、年上の造園職人たちを抑えながら、素晴らしい立派な藤の花を再生し、一気に入場者数を増大させることに成功しました。また、ある地域では、病院と地域とが一体と成って、元気で健康な人達が集まる場(コミュニティー)としての病院造りを実践していました。また、今や日本の伝統工芸とも言える、(お菓子の)飴にコーティングを施したオリジナル・アクセサリーを販売する女性経営者には、思いもよらない発想力を感じました。そして、ホンダのビジネスジェット機が遂に販売開始と成りましたが、創業者本田宗一郎氏の夢が今ここに叶ったことを、一人の日本人として喜びを感じました。
これらの進化の過程には、確かに多くの人々の協力があったと思いますが、やはり、ただ一人の個人の強き思いこそが、それらの全ての核と成って、突進し続けた結果ではないでしょうか。これもTVで見たのですが、破綻寸前だったユニバーサル・スタジオ・ジャパンを再生し、ハリーポッターを誘致し、大成功を納めた盛岡氏の思いにも、相当なものがあったのではないかと思います。ホンダのジェット機にしても、本田宗一郎氏の強き思いが、未だに会社のDNAとして残り、生き続けていたのではないでしょうか。少し大げさな話ですが、戦後の日本の繁栄と平和も、(功罪含めて)いろいろな要因があったと思いますが、今になって見ると、やはり昭和天皇の存在無くして在りえなかったと感じるのです。その思いを今上天皇が引き継いでおられる姿も同時に感じるのです。この日本には、何か営々と継続して行く(善良な)意志の力が在り、その積み重ねが「ここぞ」という時に発露する仕組みが在るのではないかと感じます。
さて一方、ゴールデンウィークに発生した不安材料としては、箱根の火山性地震があります。噴火警戒レベルも1から2へ引き上げられましたが、昨年の御嶽山の様なことがあるので心配です。しかしながらゴールデンウィーク直前という時期にも関わらず、正しい情報を公開したという意味においては、むしろ安心感があります。今後も日々の観測情報を分析することで、的確な判断が下せるのでしょう。過去の失敗をすぐに活かせる風土が生まれつつあると思いました。一方、先月ネパールで起きた大地震ですが、被害状況は日に日に拡大しており、救出活動と同時に、生存者への支援を急ぐ状況と成っています。この地震の直前には、日本の茨城県でイルカ(カズハゴンドウ)が約150頭打ち上げられ、まさに3.11直前の様相が再現され、内心では防災意識を強化している最中のことでした。被災された方々への心からの御冥福とお見舞いを申し上げます。
ネパールは政情不安の地域であり、復興への道のりは厳しいと言われています。それでもあの3.11の経験からか、略奪等は少ない様とのことです。ニュースでは、(多分)ドローンからの映像でしょうか・・・上空からの街の被害状況の映像が鮮明に映し出されていました。崩壊した街の様子や倒壊した世界遺産を見ると、そこには人々の大きな精神的ショックが発生している様に想像できます。けれども、この上空からの映像自体には、そのような部分までは映らず、ただ淡々と事実のみを映しながら(落ち着き払ったかの様に)飛行していました。よく星空を見ながら、「宇宙(空)から見たら、自分の悩み事なんて、ホントにちっぽけだよな」と思うことがあります。でも実際の現実(地上)では、あれやこれやと右往左往の日々が在ります。今の自分自身の窮状を、時に俯瞰する目で眺めてみることで、落ち着いて全体像を把握できるはずです。
今の日本の現状も、(短期で見れば)一見とても複雑で障害が多い様に見えますが、よく俯瞰して見ると、この戦後の繁栄と平和は日本の有史以来、もっとも良き時代であり、ありがたい時代であることが分かります。でも日々の日常のレベルまで視点を下げると、当然、個人個人いろいろな問題や課題と直面中で、そのような感覚は全く持てないものです。けれども、時に視点を上空へ飛ばし、鳥の目と成って全体像を俯瞰して見ると、景色は一変します。全ては繋がっていて、全ては続いていることが分かるからです。だからこそ、過去の戦争の記憶や、日本の伝統工芸や、日本人らしいDNAが、これからも大切に残して行くべきものだと理解できます。伝統の力、継続する力が、必ず次の未来の財産と成り、日本を守って行く・・・。外国人の方々が日本へ向ける視線は、まるで異次元を見るような目です。それは決して奇異なものを見る目では無く、「信じられない」という枕詞が付く、敬意を込めた驚きの声です。多分きっと、それは目に見えるものへの驚嘆ではなく、そこに至るまでの時間とその裏側に流るる精神を「見た」からだと思うのです。「観光立国」とは日本の道だと思います。都会も地方も全てが「観光」の対象に成ると思います。そこに流るる日本人の精神を見せれば、それが「観光」に成るからです。「世界の鏡」と言われる日本、日本人、そして私自身に成りたいと思います。
※コルボ指揮:バッハ「ヨハネ受難曲」
今年のゴールデンウィークは、2年振りに、クラシック音楽のお祭りである「ラ・フォル・ジュルネ・ジャパン(熱狂の日)」に友人と行って来ました。今年のお目当ては、コルボ指揮のバッハ「ヨハネ受難曲」です。以前はフォーレの「レクイエム」で大感動して、今回はいよいよバッハです。今までこの「ヨハネ受難曲」の全曲(約2時間)を聴き通したことは無かったので、少々心配でしたが、とても素晴らしい時間を体験できました。バッハの音楽には何か幾何学的(数学的)な美しさが在り、それは音楽と言うよりも、音の図形、あるいは音の彫刻の様な印象があります。それは時に、人間の感情から切り離された「自然現象」の様でもあり、冷徹な「宇宙の摂理」の様でもあります。しかしながらこの2時間に身を浸している間、「宇宙の摂理」と「人間の感情」はそもそも一体であり、宇宙全体の中に人間の魂が含まれているという優しい感覚を味わうことが出来ました。バッハの音楽もモーツァルトの音楽も、人間業を遥かに超えた世界観が在ります。今回は、その遠き世界観にほんの少し近づけた様な気がしました。もう相当の年齢の指揮者のコルボさんでしたが、演奏後には万雷の拍手を浴びて、何回も何回もステージに出て来てくれました。ここにも、異文化を理解し、素直に受け入れられる日本人のDNAがあり、とても素晴らしい時間でした。