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感謝、そして未来へ

世の中には、たくさんの凄い人(能力のある人)がいます。でも、その全ての人が(それ故に)尊敬されているとは限りません。否むしろ、尊敬されている人の方が少ないような気がします。でも、今年のノーベル医学生理学賞に選ばれた京都大学の山中伸弥教授は、その数少ない「尊敬されている凄い人」の一人ではないかと感じます。山中教授は今回の受賞に対して、国の支援への感謝を述べ、「個人でなく日本全体で受賞した賞」と話しました。あるいは、仲間の研究者への感謝、家族への感謝についても、繰り返し述べました。この「感謝」こそが、何か・・・「尊敬」に通じる鍵のような気がしました。
今年の本ブログの中で、何度も取り上げさせていただいた映画「この空の花 長岡花火物語」が、第4回TAMA映画賞の「最優秀作品賞」に選ばれました。アカデミー賞等に比べれば小さな賞かもしれません。でも、それ故に、純粋で正当な評価を得られたと思い、とても嬉しいです。なぜ私が、この映画を何度も紹介するのかと言うと、この映画は、かつての戦争や今回の3.11を乗り越えて行く(であろう)日本人の「勇気」を、圧倒的な上昇思考をもって表現(デザイン)しているからです。「長岡の歴史(過去)」という1つの「粒子」にとことん一点突破していながら、実は「世界の未来」に向かって(凄まじいほどの力強いテンポで)全面展開しているからです。そしてその最後のメッセージこそが、「仲良くしなさい」・・・つまり、「共認社会の実現」へと結実します。作者の持つある種の研ぎ澄まされた感性が、これからの「共認の時代」を予見したのでしょうか。これは大資本による商業映画では無いので、どこでも上映している訳ではありませんが、もし近くで見るチャンスがあったら、ぜひ一人でも多くの日本人(特に若い人)に足を運んで欲しいと思います。
実は、この作品の監督である大林宣彦氏が、ラジオでこのように語っていました。「この作品は人間の知性などで出来上がったものではなく、大自然の(何か、よく分からないが・・・)そういう力によって出来たものだと思う」「自然界の力こそが全てであり、人間の考えることなど・・・」。言葉自体は多少違うと思いますが、要は「事を成すことが出来たのは、私(=人間)の力では無く、自然界の力だ。そこへの感謝しかない」という意味のことを話されていました。大林監督は、この作品の製作に入る前、大きな病気をされて、生死を彷徨ったそうです。その時、きっと何かが、訪れたのだろうと思います。そうでなければあの様なモノ(見ていない人には判らないですが・・・)は、生まれなかったでしょう。あれはきっと、映画ではないのかもしれません。大林監督をはじめ、(この映画にも出て来る)山下清も、ピカソも、岡本太郎も、芸術(アート)の力で未来への警告を鳴らしています。だってアート作品にしなければ、いつまでも残らないから。だからこそ、今、私たちは過去と現在の芸術から何かを学び、そして未来の子ども達に向けて希望を残さなければいけません。
山中教授も大林監督も、きっと「尊敬されている凄い人」です。もう、お顔を見れば分かります。その原点は、やはり「感謝の心」だと思います。自分の功績や作品を「オレが作った」「オレが考えた」と捉える人に「感謝の心」は在りません。でも、「私ではない、何か別の力によって出来た」「造らされた」「造らせていただいた」と、心の底から思える人からは、自然に感謝の言葉が出て来ます。未来の子ども達や未来の世界のために、何かを残してあげたい。そういう志や思いやりのある人に、自然界は何かを授けたのではないでしょうか。決して自分の力だと勘違いしないような人にだけ、そっとヒントやアイデア、閃きを与えたのではないでしょうか。私には、そうとしか考えられないのです。
さて今日、WOWOWで録画しておいたビーチボーイズの来日ライブを見ました。このライブは今年の夏に行われて、本当は行きたかったのですが、都合がつかず、残念でした。私の好きなブライアン・ウィルソンも参加していて、映像だけでも、とても楽しかった。この人が残してきた音楽も、表面は明るく軽快なサウンドですが、その裏側は、暗く、重く、孤独の声に満ちたものです。アメリカを象徴するバンドでしたので、その作品にアメリカの未来が転写されたのでしょう。ビーチボーイズの音楽は、アメリカの歴史そのもの。陽気さの陰に、深い闇が隠れています。そして彼は、ステージの一番端にいて、メンバーがノリノリの音楽が演奏している間も、キーボードの前に静かに座っていました。きっとこの人は、その佇まいで、何かを表現しているのだろうと感じました。
芸術や科学も未来へのメッセージです。私たちの生き方も未来へのメッセージです。そのメッセージを(今を生きる)私たちは発信し続けなければ成りません。であるならば、そのメッセージを発信できる自分自身に成らなければなりません。つまり、大自然への感謝の心を持つことです。自然とは、山や川という風景だけでなく、人間業を超えた「叡智の海」ようなものです。そこへ向けての感謝の心があって初めて、私たちは未来を生きる人たちへの貢献ができると思います。「共認の時代」とは、「期待に応える」ことが人生最大のテーマと成る時代。私たちは、未来の子どもたちの期待に応えられているでしょうか。鍵は、「感謝」です。感謝の心で、前へ進むことだと思います。それが唯一の道だと思います。私たちも、建設業という道で、そのような探求をしていこうと思います。