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とても広くてとても長く

今月は参議院選挙です。けれどもきっと投票率は低く成るのでしょう。先日の東京都議選挙も非常に低い投票率でした。組織政党にとっては、投票率が低いことがプラス効果に成りますので、なかなか投票率を上げるためのシステムは進みません。ただ今回からインターネットでの選挙活動が解禁と成りましたので、多少の期待は持っています。どこが勝つか負けるか以前の問題として、最低でも60%以上(理想は70%以上)の有権者が参加する選挙が行われて欲しいと思います。その結果が国民の総意に成ると思いますし、国民の期待でもあり、ある意味においては国民の責任にも成ります。国の未来を決めるのは、やはり国民です。マスコミやメディアが正しい情報を提供し、その上で有権者が正しい判断を行う。その連続によって、国の未来は定まって行くのでしょう。
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最近、またDVDでギリシャのアンゲロプロス監督の映画を2本観ました。「シテール島への船出」と「エレニの旅」です。共にギリシャの戦争と内戦の歴史の中で懸命に生きた人々を描いた作品です。「霧の中の風景」同様に、とても美しい映像と長回しの撮影手法が、その時代を生きた人々の内面にゆっくりと侵入して行きます。物語としては(もちろん)悲劇なのですが、そこには「悲劇」を俯瞰する「ある種の視線」が内在しているように感じます。それは決して「冷めた」視線では無く、あくまで「覚めた」視線です。かつてギリシャ人が体験した、過酷な道程(旅)を俯瞰する「眼」です。その眼を画面に「入れる」ためには(どうしても)とても広くてとても長い「絵」が必要だったのかもしれません。通常の人間の生理では受け付けられない程の「距離」と「時間」が無ければ、その「眼」は画面に収まり切らなかったのではないかと。
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「エレニの旅」では(屋外セットで)川沿いの荒野に1つの村を実際に造り、映画の終盤では、その村を全て水没させます。もちろんCGではありません。商業映画に成るはずの無い1本の作品のために、これだけのコストと労力を費やすアンゲロプロフ監督とは、一体何者なのか。少なくとも、自国の歴史を俯瞰しつつ、新しい時代を切り拓こうとする「志」は本物だったのではないでしょうか。残念ながら、昨年交通事故で亡くなってしまいましたが、残された作品は永遠に生き続けるでしょう。まだ未見の作品がありますので、今後も探して、観て行きたいと思います。
そしてギリシャは(現在も)財政的に厳しい状態が続いています。もちろん世界全体もそのように成っています。政治、経済、環境、社会・・・あらゆる物事が曲がり角に来ているのは間違いないでしょう。日本も同様に、今回の選挙結果によって今後の大きな方向性が決まります。同時に、私たちの経済活動の流れもさらに見えて来ます。確かに楽観は禁物ですが、新しい流れが生まれて来たという意味においては、「変化」は大歓迎です。日本は様々な困難と遭遇するたびに強く成って来ました。今回の「困難」はかつて無い程の「飛躍」を生み出す可能性があると思います。建設業界においても、「スクラップ&ビルド」の流れが下降し始め、「保守&修繕」へ変わって行くでしょう。今はアベノミクス効果で(一見)建設投資が回復しているように見えますが、大きな流れにおいては「保守&修繕」に向かうはずです。ここを見誤ると、また同じ時代を繰り返し、いつまでも抜け出せない罠に陥ります。
目先のミクロの動きだけに捉われず、長期のマクロな動きも感じなければならない。予測しなければならない。視界に入れなければならない。アンゲロプロス監督の映画のように、「とても広くてとても長い」視座を持つこと。そういう視点で経営を行い、仕事を行い、生活を行い、選挙を行う。私たちは、少し物事を「とても狭くてとても短く」見過ぎていたのかもしれません。もう少し「引き絵」で観て、俯瞰しなくてはならなかったのに。そのような高くて遠い視点(ビジョン)を持って、あらゆる意志決定をして行く時代に成ったと思います。最終的は自分自身を俯瞰すること。つまり、自身の良心と向き合うこと。そこにしか本当の答えは無いのかもしれません。