社長ブログ

観光立国と平和への道

先日行われた参議院選挙の前に、日銀は景気判断を上方修正し、「緩やかに回復しつつある」と発表しました。アベノミクスに対する世間の評価は「賛否両論」あります。「長引くデフレが終わりホッとした」「景気が良く成って来た」という人もいますし、「未だ景気回復の実感は無い」「物価が上がって来た」「消費増税は困る」「原発反対」という人も多いです。ただ(仮に一時的にせよ)「デフレから脱却することができた(ようだ)」という点においては、まだ日本は守られていると感じます。もし未だデフレ圧力が継続していたならば、国全体がさらに収縮していて、景気回復の実感の「有無」さえ言い合える状況では無かったと思います。
よって問題はこれからです。景気回復が日本全体に行き渡っているわけではありません。今回の「穏やかな回復」も、「異次元の金融緩和」というある種の「投薬効果」によるもので、未だ本質的な「治癒」に成っているわけでもありません。(今後は、逆に)インフレに対する懸念も生まれて来るでしょう。要は、先ずは「生命」を救うことはできたが、本当に元通りの「健康体」に成れるのかどうかだと思います。
今回の参議院選挙は(やはり低い投票率でしたが)、当面の景気回復を優先させた結果ではないでしょうか。世界的にはまだデフレ状態が続いていますので、日本が今すぐ急激なインフレに成る可能性は少ないでしょうし、(自民党が単独過半数に届かなかったので)憲法改正論議も多少は遠のく可能性もあり、やはり国民の期待である「景気回復」に一点集中すべきと思います。「みんな」が好況を実感できる状態を早く造ること。そのためには、消費増税の判断や行政改革も含めて、たくさんの課題が残っています。
私が今後の日本に期待しているのは「観光立国」というテーマです。今朝の日経新聞に、2013年上期の訪日外国人客数が過去最高(495万5千人)と成り、年間1,000万人の政府目標に近づいて来たとありました。日本の強みは、「技術力」と「国民性」にあると思っていますが、もう1つ「観光立国」という希望も残っています。富士山や伊勢神宮を始めとする(西洋にも他のアジアにも無い)今現在も光輝いている聖地があります。皇居もそうかもしれません。そして大自然の山々。数々の文化的な遺産。減少しつつありますが「里山」や「古里」も、まだまだ多く残っています。いずれも、世界中のどの地域とも違う、穏やかで、優しくて、思いやりにあふれた風景です。
高度成長の流れに乗って、私たちは日本の原風景を壊して来ました。それは、先ずは経済成長を優先させた結果からでしょう。でもそのおかげで、私たちは現在とても便利で快適な暮らしを享受しています。よって過去を否定する意味は無いと思います。けれどもこれからは(経済成長のためにも)日本の風景を再生(新生)し、世界中の人々が日本へ足を運び、日本を体験し、日本人と触れ合い、日本を尊敬することを望みます。結果的に日本全体の経済成長にも結びつくはずです。同時に農業や林業の再生にも連動するでしょう。そうです、「観光立国」という視点を置くことで、日本の持っている強みを生かしながら、経済成長と自然再生を同時に手に入れるのです。日本は、それだけの巨大なポテンシャルを持っているはずです。
経済成長は時に下降することがあります。けれども大自然は決して変わらない価値を持ち続けます。先週末、沖縄へ行って来ましたが、鉄筋コンクリート住宅も木造住宅も、同じような「赤瓦」の屋根がとても印象的でした。沖縄の歴史や文化を象徴する赤瓦の家やマンションを観ると、これも1つの美しい風景と感じます。日本の場合、観光地は良いのですが、それ以外の普通の街並みに美しさが無く、諸外国の街並みから劣って見えます。要は「観光立国」にするとは、決して観光地を開発するだけでは無く、普通の街、普通の里を美しくすることでもあります。
そういう意味で、建築の新たな役割も生まれて来るでしょう。確かに1軒1軒の家は、個人の財産であり、他人には無関係です。けれども外観は、それ自体が公共の財産であり、街の価値を大きく左右します。日本中を美しくするために、みんなで(長い時間を掛けて)取組むのです。世界一の技術力(ハード&ソフト)で世界の繁栄に貢献し、日本人固有の親切な国民性で人々を救い、美しく光る国土で世界中の人々を感動させ、そして癒す。結局それは日本全体の経済を刺激するでしょうし、日本人一人ひとりの人間性をも成長させるでしょう。そして世界から尊敬され、喜ばれる国に成ると思います。
時間を掛けて改革する力こそが本物だと思います。一本の木が育つのに40年以上掛かります。ひとつの森を再生するのに100年以上掛かります。自分が生きている間には結果は出ません。けれども過去を生きた先人たちは、未来の子ども達のために、そのような地道な努力をして来たのです。沖縄の広大な「平和祈念公園」に行き、戦争で生命を落とされた多くの方々の墓碑を見つめた時、平和を築くのには長大な時間が掛かるのだと感じました。だからこそ一歩一歩平和を実現して行かなければならない。現代を生きる私たちは、そろそろ原点に戻って、自然を愛し、先祖に感謝し、未来への土産を造る時が来たのでは無いでしょうか。そのような意識が生まれた時、日本は本当の「健康体」と成って、生かされるのではないかと思います。
PS.大好きな映画、「この空の花~長岡花火物語」の大林宣彦監督が、次回作の撮影をすでに撮り終えたそうです。今度の映画「野のなななのか」は、北海道の芦別が舞台です。東日本大震災から2年。日本の古里と日本人の心を再生する、きっときっと素敵な映画に成るでしょう。ちなみに今回の映画も、「この空の花」同様に、戦争秘話を扱っているようです。いま公開中の宮崎駿監督の「風立ちぬ」も、ゼロ戦の開発者の物語です。今こそ過去の戦争を思い出し、亡くなられた方々を追悼して、戦争の無い平和な世界を実現する時なのでしょう。ちなみに私の父(会長)の古里は、芦別のすぐ隣の滝川です。何か縁を感じます。大林監督の芦別映画、今からとても楽しみです。