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ミュシャ展にて

今年のゴールデンウィークは、とても気持ちの良い天気が続きましたが、5月も半ばに成ると、ゆっくりと梅雨の季節が近づいて来ます。それでも雨が降ることで、日本の清らかな水資源が蓄えられ、豊かな自然界と人間の生活が維持されます。「自然との共生」と言いますが、それは自然と人間が、別個の(対等の)存在同士というニュアンスを感じさせます。でも本来は、自然界の中に人間が含まれる訳で、人間は自然の摂理に従わねばならぬ「従」の存在のはずです。ここにまだ(人間側の)驕りが残っており、未だに地球規模の自然災害が発生している真因に成っているように感じます。日本人には、八百万の神、自然信仰のDNAが残っているので、「自然界に含まれている」という感覚は、日本人が一番よく理解できるはずです。自然界はとても厳しく、摂理と道理によって運行されています。人類は「自然との共生」から、「自然への感謝」「自然への畏れ」へと回帰すべきなのでしょう。
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さて今年のゴールデンウィークは、妻と一緒に六本木の国立新美術館「ミュシャ展」へ行きました。ミュシャという画家の名は全く知らなかったのですが、いくつかの美しいポスターや装飾パネルを見たことがありました。けれども今回の展覧会のメインは、彼が晩年に描いた「スラブ叙事詩」という巨大な大作群です。チェコ出身の彼が(パリで)華やかなポスター画等によって成功を得た後、故郷に戻り(縦6メートル、横8メートルの!)巨大な20枚の油彩画を描きました。これが古代から近代に至るスラヴ民族の苦難と栄光の歴史の大絵巻、「スラブ叙事詩」です。実際に観た印象は・・・もう、壁一面の巨大キャンパスに描かれた風景、人物、精神からの圧倒的なエネルギーを感じ、この20枚の大作を(一生ではなく)たった16年で描き上げたことが信じられない程でした。
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日本も世界も数々の戦乱や動乱、自然災害を乗り越えて、今の時代に至っています。確かに理想的な状態にはまだ程遠い場所に居ると思います。けれども過去の戦争の時代よりも、明らかに今は豊かで幸福な時代を生きています(生かしていただいています)。私たちはこのことに、深く、深く感謝しなければ成らないと思います。その上で、この厳しい自然界の中で、この厳しい世界情勢の中で、懸命に生きて行くしかありません。ミュシャの描いた「スラヴ叙事詩」の中に、じっとこちら側を見つめる人物が何人かいました。その鋭い眼の奥の方から、「甘えるな。今を懸命に生きろ」という声が聴こえたような気がします。二人で美術館を出てから、近くのお店で美味しいランチを食べて、家に帰りました。それがどんなに幸福な時間なのか。深く、深く、思いを巡らせることのできた素晴らしいゴールデンウィークでした。